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Pablo Neruda "大いなる歌" Canto General

ここでは、「Pablo Neruda "大いなる歌" Canto General」 に関する記事を紹介しています。
千曲川

大島博光記念館へようこそ。
長野詩人会議が中心となって建設運動をすすめ、2008年7月にオープンしました。
愛と抵抗を歌った博光の詩の世界にふれていただけます。


 マニュエル・ロドリゲス
                           パブロ・ネルーダ

  生

おばさんよ みんな言ってるよ
おふくろよ みんな言ってるよ 言っていたよ
川も風も 言ってるよ
みんなが ゲリラを見たって

きっと牧師さんかも知れないね
あるいは そうじゃないかも知れないね
きっと ただ 風なのかも知れないね
雪のうえを吹いてきたんだ
そうだ 雪のうえを吹いてきたんだ
おふくろさんよ 見ない方がいいよ
マニュエル・ロドリゲスが
馬を飛ばして 来るからだ

ゲリラはやってくるのだ
海べづたいに


  受 難

メリピラから忽然と姿をあらわし
タラガンテの方へ馬をすすめ
サン・フェルナンドをよぎり
ポメールに立ち
ランカグアを通り
サン・ロザンドを通り
カウケネスを シヤナを
ナチミエントを
そうだ ナチミエントを通り
シニクを通り
マニュエル・ロドリゲスは
どこからでも やってくる

この卵を かれに渡せ
かれといっしょに行こう

  死

ギターも音をたてるな
国じゅうが 喪なのだ
おれたちの大地は暗くなった
やつらは ゲリラを殺した

ティル・ティルで 人殺しどもは
かれを殺した
かれの刀が血まみれだ
道のうえに
そうだ 道のうえに
だれが信じょう
それが おれたちの血であり
おれたちの喜びであったひとの血だとは

大地が泣いている
おれたちは 声も出ない


(『ネルーダ詩集』──「大いなる歌──解放者たち」)

 ソコッロの蜂起者たち


(圧制者の法律を 破り棄てて
「暴君に死を」と叫んで)
わが国に 新しい種子を蒔(ま)いたのは
マニュエラ・ベルトランだった
それは ヌェヴァ・グラナダの
ソコッロの町においてだった
蜂起(ほうき)者たちは 圧制を倒そうと呼びかけて
王国を ゆさぶった

かれらは 独裁に反対し
汚れた特権に反対して 団結し
当然の権利を与えろと
要求書を ふりかぎした
かれらは 武器と石をもって団結し
民兵と女たちから成る民衆は
隊伍を組んで 意気さかんに
ボゴタとその貴族領のうえを前進した

そのとき 大司教がやってきた
「おまえたちの要求はかなえられるだろう
神の御名(みな)にかけて わしが約束する」

ふたたび 民衆が 広場に集まった

大司教は 厳(おごそ)かにミサをおこない
神にかけて 誓いをたてた

かれは民衆にとって 平和であり正義であった
かれは命令した 「さあ 武器を捨てて
みんな それぞれの家にもどるがよい」

蜂起者たちは 武器を捨てた
ボゴタの支配者たちは 大司教をよろこび迎え
いつわりのミサをとりおこなった
その背信と 裏切りとをほめたたえた
かれらは パンと権利を与えることを拒否し
首謀者たちを銃殺し
切り落した その生首を
村村に送って さらし首にした
同時に 司教の祝福を
村村に伝えることも忘れなかった
そして国じゅうで舞踏会を催した

わが国に蒔かれた
最初の重大な 種子よ
あなたがたは 敵意にみちた夜のなかで
穂のような人民の蜂起を
ひそかにうながしつづけているのだ
あなたがた 眼も見えぬ立像たちよ

(『ネルーダ詩集』──「大いなる歌──解放者たち」)
 インカの最期
            
断末魔は カハマルカ*1で始まった             
青い蕊(しべ) 秀(ひい)でた樹木 若きアタワルパ*2は
風の便りに ざわめく鉄の音をきいた
得体の知れぬ閃光が
海の方で 揺らめいていた
それは 草原のなかで 地面を蹴あげる
強力な騎馬の一隊であった
隊長たちが到着した
インカは 貴族たちに囲まれて
奏楽のなかを出てきた
ほかの星からやってきた 汗くさい
ひげを生やした訪問者たちが
敬礼をささげにきた
腐った山犬 心よこしまな神父ヴァルヴェルデ*3は
一切れの寵細工(かございく)のような奇妙なもの*4を差し出す
それは あの軍馬がやってきた
ほかの星の木の実ででもあったのか
アタワルパは それを手にとるが
どうするものか わからない
それは輝きもしなければ 音もたてない
かれは微笑(ほほえ)みながら 地に投げ捨ててしまう
『死だ 復讐だ 殺せ
わしが許すぞ』
山犬が 人殺しの十字軍に叫んだ
命令は雷鳴のように兵隊どもに伝わった
われわれの血は 揺藍(ようらん)の中にとび散った
この瞬間にも 皇子たち*5は 聖歌隊のように
断末魔のインカをじっととり巻いていた

剣と十字架のもとに
百千のペルー人が仆(たお)れた
血は アタワルパの服を濡らした

冷酷なエストレマドラの豚飼い ピサロ*6は
インカの両手を綴りあげた
夜がペルーの上に降りてきた
まっ黒い墨のように

*1 カハマルカ ペルー北部の都。ピサロはここに宿営を置き、一五三二年十一月十六日、アタワルパ皇帝をおびき出す。
*2 アタワルパ インカ帝国最後の皇帝。
*3 ヴァルヴェルデ 従軍神父ビセンテ・デ・ヴァルヴェルデは片手に聖書、片手に十字架をもってアタワルパの玉座に近づいて、キリスト教に改宗するように申し入れる。
*4 奇妙なもの 聖書を指す。
*5 皇子たち 異母兄弟のワスカルを指す。このワスカルとアタワルパの内紛を利用して、ピサロはインカ帝国を征服することができた。
*6 ピサロ フランシスコ・ピサロ。南スペインのエストレマドラ地方のトルヒーヨという村に生れ、豚飼いとして少年時代を過す。

(角川書店『ネルーダ詩集』──「大いなる歌」)

   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇ 
 強大を誇ったアステカ王国やインカ帝国も、スペイン征服者たちの攻撃にあうと、一瞬のうちに崩壊し去った。
 一六世紀このかた、南アメリカ諸国の人民にのしかかった不幸と悲劇ほど言語に絶したものはない。とりわけインカ帝国崩壊の歴史ほどに、スペイン征服者の残虐さと非道な収奪を物語っているものはない。
 一五三二年一一月一五日、スペインの豚飼いフランシスコ・ピサロは、歩兵一一〇名、騎兵七六名の手勢を連れて、ペルー北部のカハマルカに着いた。そこには若きインカ皇帝アタワルパが軍を進めて滞在していた。ピサロはアタワルパの陣営に便者を送り、腹黒い陰謀をかくして「スペイン軍はキリスト教をひろめるための平和使節である。皇帝のご協力を乞い願いた
い」という書面を提出し、内乱の平定に助力することを約束した。その答礼として、アタワルパは武器をもたない部下を連れて、ピサロを訪問する。ピサロはこのとき初めて披の意図を部下にもらし、兵力を配置して、アタワルパを瞬間のうちに生捕りにする。
 ネルーダは、この悲劇を「インカの最期」のなかに描いている。胸えぐるような悲壮なしらべで。

(『パブロ・ネルーダ』──『大いなる歌』)
ネルーダ『大いなる歌』 目次 Pablo Neruda " Canto General"

I. 地上のランプ  La lámpara en la tierra; A Lamp on Earth
Ⅱ. マチュピチュの高み  Alturas del Macchu Picchu; Heights of Macchu Picchu
Ⅲ. 征服者たち  Los conquistadores; The Conquerors
Ⅳ. 解放者たち  Los libertadores; The Liberators
V. 裏切られた砂   La arena traicionada; The Sand Betrayed
Ⅵ. アメリカ、無駄に名前を呼び出すな  América, no invoco tu nombre en van
Ⅶ. チリの大いなる歌   Canto general de Chile
Ⅷ. 土地はファンと呼ばれている  La tierra se llama Juan; The land is called Juan
IX. 木こりよ めざめよ  Que despierte el leñador
X. 逃亡者   El fugitivo 
XI. プニタキの花  Las Flores de Punitaqui
XII. 歌の河  Los ríos del canto
XIII. 暗闇の祖国のための新年の合唱  Coral del año nuevo para la patria en tinieblas
XIV. 素晴らしい大洋  El gran océano
XV. わが来歴  Yo soy; I am

詩集『大いなる歌』はラテン・アメリカ詩ばかりか、世界詩の傑作のひとつである。一九七一年のノーベル文学賞はネルーダに授与されたが、それも『大いなる歌』に与えられたとも言えるだろう。
 ネルーダが『大いなる歌』の構想をいだいたのは一九四三年の秋、メキシコからの帰国の途中、グアテマラやペルーのマチュ・ピチュ大遺跡などを歴訪してのことである。一九四五年には第一章の「地上のランプ」と第二章の「マチュ・ピチュの高み」ができあがり、この詩集が刊行されたのは一九五〇年である。
 『大いなる歌』においては、題名の示すように、全般的・全体的な世界がうたわれ、あらゆる主題が追求されている。そこには、新大陸の創世記・大自然の地理、動物、植物がうたわれ、南アメリカ諸国と諸国人民のいりくんだ民族の歴史、スペインの征服者たちに反抗してたたかった戦士たち、解放者たちの英雄像などがうたいこめられている。この詩集はまさに新大陸のエンサイクロペディアであり、その宇宙創生史である。そしてこの詩集の偉大さは、アメリカ諸国人民の解放と自由を声高く、また声深く呼びかけているその壮大なスケールにある。

<全部の目次>

  Canto general                       Pablo Neruda

- I -  La lámpara en la tierra   地上のランプ
Amor América (1400)  アメリカを愛す(1400)
Vegetaciones  植生
II
Algunas bestias  獣
III
Vienen los pájaros 鳥が来る
IV
Los ríos acuden  河川は来る
Orinoco オリノコ川
Amazonas アマゾン
Bío-Bío パンジャブ
Minerales  鉱物
V
Minerales  鉱物
VI
Los hombres  人間たち(アステカマヤインカ

- II -  Alturas del Macchu Picchu   マチュピチュの高み
I
Del aire al aire, como una red vacía,
II
Si la flor a la flor entrega el alto germen
III
El ser como el maíz se desgranaba en el inacabable
IV
La poderosa muerte me invitó muchas veces:
V
No eres tú, muerte grave, ave de plumas férreas,
VI
Entonces en la escala de la tierra he subido
VII
Muertos de un solo abismo, sombras de una hondonada,
VIII
Sube conmigo, amor americano.
IX
Águila sideral, viña de bruma.
X
Piedra en la piedra, el hombre, dónde estuvo?
XI
A través del confuso esplendor,
XII
Sube a nacer conmigo, hermano.

- III -   Los conquistadores   征服者たち
I
Vienen por las islas (1493) 彼らは島々に来た
II
Ahora es Cuba   今、キューバは
III
Llegan al mar de México (1519) メキシコの海に達する(1519年)
IV
Cortés
V
Cholula
VI
Alvarado アルバラド
VII
Guatemala グアテマラ
VIII
Un obispo 司教
IX
La cabeza en el palo  
X
Homenaje a Balboa バルボアへのオマージュ
XI
Duerme un soldado 眠る兵士
XII
Ximénez de Quesada (1536) ヒメネス·デ·ケサダ(1536)
XIII
Cita de cuervos カラスの引用
XIV
Las agonías 苦しみ(インカの最期)
XV
La línea colorada  レッドライン
XVI
Elegía エレジー
XVII
Las guerras ウォーズ
XVIII
Descubridores de Chile チリの発見
XIX
La tierra combatiente   陸上戦闘機
XX
Se unen la tierra y el hombre 土地と人間との間に
XXI
Valdivia (1544) バルディビア(1544)
XXII
Ercilla エルシー
XXIII
Se entierran las lanzas  ランスは、埋葬されている
XXIV
El corazón magallánico (1519)  マゼランの心臓(1519年)
Recuerdo la soledad del estrecho
Los descubridores aparecen y de ellos no queda nada
Sólo se impone la desolación
Recuerdo al viejo descubridor
Magallanes
Llega al Pacífico
Todos han muerto
XXXV
A pesar de la ira

- IV -   Los libertadores   解放者たち
Los libertadores 解放者たち(人民の木)
Cuauhtemoc (1520)
II
Fray Bartolomé de las Casas
III
Avanzando en las tierras de Chile
IV
Surgen hombres
V
Toqui en Caupolicán  酋長カウポリカン
VI
La guerra patria 祖国戦争
VII
El empalado
VIII
Lautaro (1550) ラウターロ
IX
Educación del cacique
X
Lautaro entre los invasores
XI
Lautaro contra el centauro (1554)
XII
El corazón de Pedro de Valdivia ペドロ・ヴァルディヴィアの心臓
XIII
La dilatada guerra
XIV
(Intermedio)
La colonia cubre nuestras tierras (1)
XV
Las haciendas (2)
XVI
Los nuevos propietarios (3)
XVII
Comuneros del Socorro (1781)  ソコッロの蜂起者たち
XVIII
Tupac Amaru (1781)
XIX
América insurrecta (1800)
XX
Bernardo O’Higgins Riquelme
XXI
San Martín (1810)
XXII
Mina (1817)
XXIII
Miranda muere en la niebla (1816)
XXIV
José Miguel Carrera (1810)   
XXV
Manuel Rodríguez  マニュエル・ロドリゲス
XXVI
Artigas
XXVII
Guayaquil (1822)
XXVIII
Sucre
Las banderas
XXIX
Castro Alves del Brasil
Toussaint l’Ouverture
XXXI
Morazán (1842)
XXXII
Viaje por la noche de Juárez  
XXXIII
El viento sobre Lincoln
XXXIV
Martí (1890)
XXXV
Balmaceda de Chile (1891)
XXXVI
Emiliano Zapata con música de Tata Nacho
XXXVII
Sandino (1926)
XXXVIII
(1)
Hacia Recabarren
(2)
El cobre
(3)
La noche en Chuquicamata
(4)
Los chilenos
(5)
El héroe
(6)
Oficios
(7)
El desierto
(8)
(Nocturno)
(9)
El páramo

XXXIX
Recabarren (1921) レカバーレン
Envío (1949)
Padre de Chile

XL
Prestes del Brasil (1949)

XLI
Dicho en Pacaembú (Brasil, 1945)

XLII
De nuevo los tiranos

XLIII
Llegará el día

- V -  La arena traicionada   裏切られた砂
Tal vez, tal vez el olvido sobrela tierra como una capa puede
Los verdugos   死刑執行
El doctor Francia 
Rosas (1829-1849)
Ecuador   エクアドル
García Moreno   ガルシア·モレノ
Los brujos de América  アメリカの魔術師
Estrada   エストラーダ
Ubico
Gómez   ゴメス
Machado   マチャド
Melgarejo   メルガレホ
Bolivia (22 de marzo de 1865)
Martínez (1932)
Las satrapías

II
Las oligarquías
Promulgación de la ley del embudo
Elección en Chimbarongo (1947)
La crema
Los poetas celestes 天上の詩人たち
Los explotadores オペレータ
Los siúticos
Los validos
Los abogados del dólar  ドルの弁護士
Diplomáticos (1948) 外交官
Los burdeles 売春宿
Procesión en Lima (1947) リマの行列(1947)
La Standard Oil Co.  スタンダード石油(株)
La anaconda Copper Mining Co. アナコンダ銅鉱山(株)
La United Fruit Co. ユナイテッドフルーツ株式会社
Las tierras y los hombres   土地と男性
Los mendigos  乞食
Los indios   インディアン
Los jueces   裁判官

III
Los muertos de la plaza (28 de enero 1946 Santiago de Chile) ラ・プラサの死者たち(1946年1月28日、サンティアゴ、チリ)
Las masacres   虐殺
Los hombres del nitrato   硝酸塩の男性
La muerte   死
Cómo nacen las banderas   どのようにして旗は生まれたか
Los llamo   コー​​ル
Los enemigos   敵
Están aqui   彼らはここにいる
Siempre   常に

IV
Crónica de 1948 (América)   1948のクロニクル(アメリカ)
Paraguay
Brasil
Cuba
Centro América
Puerto Rico
Grecia
Los tormentos
El traidor
Acuso
El pueblo victorioso

V
González Videla el traidor de Chile (Epílogo) 1949 De las antiguas

- VI -  América, no invoco tu nombre en vano  アメリカ、無駄に名前を呼び出すな
Desde arriba (1942)

II
Un asesino duerme  殺人者は眠る

III
En la costa  海岸で

IV
Invierno en el sur, a caballo

V
Los crímenes

VI
Juventud

VII
Los climas

VIII
Varadero en Cuba  キューバのバラデロ

IX
Los dictadores  独裁者

X
Centro-América  中央アメリカ

XI
Hambre en el sur  南の飢餓

XII
Patagonia  パタゴニア

XIII
Una rosa  バラ

XIV
Vida y muerte de una mariposa  バタフライの生と死

XV
El hombre enterrado en la Pampa  パンパに埋もれ男性

XVI
Obreros marítimos

XVII
Un río

XVIII
América  アメリカ

XIX
América no invoco tu nombre en vano

- VII - Canto General de Chile  チリの大いなる歌
Eternidad
Himno y regreso (1939)

II
Quiero volver al sur (1941)

III
Melancolía cerca de Orizaba (1942)

IV
Océano
Talabardera
Alfarería
Telares

VI
Inundaciones
Terremoto

VII
Atacama

VIII
Tocopilla

IX
Peumo
Quilas
Drimis Winterei


X
Zonas eriales

XI
Chercanes
Loica
Chucao

XII
Botánica

XIII
Araucaria

XIV
Tomás Lago
Rubén Azócar
Juvencio Valle
Diego Muñoz

XV
Jinete en la lluvia

XVI
Mares de Chile

XVII
Oda de invierno al río Mapocho


- VIII -   La tierra se llama Juan  土地はファンと呼ばれている
Cristóbal Miranda (Palero-Tocopilla)

II
Jesús Gutiérrez (Agrarista)

III
Luis Cortés (de Tocapilla)
Olegario Sepúlveda (Zapatero Talcahuano)

V
Arturo Carrión (Navegante, Iquique)

VI
Abraham Jesús Brito (Poeta popular)   エィブラハム・エイズス・ブリトー(民俗詩人)

VII
Antonino Bernales (Pescador, Colombia)

VIII
Margarita Naranjo (Salitrera «María Elena» Antofagasta)

IX
José Cruz Achachalla (Minero, Bolivia)

X
Eufrosino Martínez (Casa Verde, Chuquicamata)

XI
Juan Figueroa (Casa de Yodo «María Elena», Antofagasta)

XII
El maestro Huerta (De la mina «La Despreciada», Antofagasta)

XIII
Amador Cea (De Coronel, Chile, 1949)

XIV
Benilda Varela (Concepción, Ciudad Universitaria, Chile, 1949)

XV
Calero, trabajador del banano (Costa Rica, 1940)

XVI
Catástrofe en Sewell

XVII
La tierra se llama Juan

- IX -  Que despierte el leñador  木こりよ目覚めよ
Que despierte el leñador  木こりよ目覚めよ

- X -    El fugitivo  逃亡者
El fugitivo (1948)  逃亡者

- XI -   Las Flores de Punitaqui  プンタキの花
El valle de las piedras (1946)

II
Hermano Pablo

III
El hambre y la ira

IV
Les quitan la tierra

V
Hacia los minerales

VI
Las flores de Punitaqui

VII
El oro

VIII
El camino del oro

IX
Fui más allá del oro: entré en la huelga.

X
El poeta

XI
La muerte en el mundo

XII
El hombre

XIII
La huelga

XIV
El pueblo

XV
La letra

- XII -  Los ríos del canto   歌の河
Carta a Miguel Otero Silva. En Caracas (1948)

II
A Rafael Alberti (Puerto de Santa María, España) ラファエル·アルベルティ

III
A González Carbalho (en Río de la Plata)

IV
A Silvestre Revueltas, de México en su muerte (oratorio menor)

V
A Miguel Hernández asesinado en los presidios de España スペインの刑場で殺されたミゲル・エルナンデスへ

- XIII -  Coral del año nuevo para la patria en tinieblas  暗闇の祖国のための新年の合唱
Saludo (1949)

II
Los hombres de Pisagua

III
Los héroes

IV
González Videla

V
Yo no sufrí

VI
En este tiempo

VII
Antes me hablaron

VIII
Las voces de Chile

IX
Los mentirosos

X
Serán nombrados

XI
Los gusanos del bosque

XII
Patria te quieren repartir

XIII
Reciben órdenes contra Chile

XIV
Recuerdo el mar

XV
No hay perdón

XVI
Tú lucharás

XVII
Feliz año para mi patria en tinieblas

- XIV -  El gran océano  素晴らしい大洋
El gran Océano

II
Los nacimientos

III
Los peces y el ahogado

IV
Los hombres y las islas

V
Rapa Nui

VI
Los constructores de estatuas (Rapa Nui)

VII
La lluvia (Rapa Nui)

VIII
Los oceánicos

IX
Antártica

X
Los hijos de la costa

XI
La muerte

XII
La ola

XIII
Los puertos

XIV
Los navíos

XV
A una estatua de proa (Elegía)

XVI
El hombre en la nave

XVII
Los enigmas

XVIII
Las piedras de la orilla

XIX
Mollusca gongorina

XX
Las aves maltratadas

XXI
Leviathan

XXII
Phalacro-Corax

XXIII
No sólo el albatros

XXIV
La noche marina

- XV -  Yo soy   我が来歴
La frontera (1904) 辺境

II
El hondero (1919)

III
La casa 家

IV
Compañeros de viaje (1921)

V
La estudiante (1923)

VI
El viajero (1927)

VII
Lejos de aquí

VIII
Las máscaras de yeso

IX
El baile (1929)

X
La guerra (1936)

XI
El amor

XII
México (1940)

XIII
En los muros de México (1943)

XIV
El regreso (1944)

XV
La línea de madera

XVI
La bondad combatiente

XVII
Se reúne el acero (1945)

XVIII
El vino   ぶどう酒

XIX
Los frutos de la tierra

XX
La gran alegría 大きな悦び

XXI
La muerte 死

XXII
La vida

XXIII
Testamento (I) 遺言(1)

XXIV
Testamento (II)  遺言(2)

XXV
Disposiciones 手筈

XXVI
Voy a vivir (1949)

XXVII
A mi partido 私の党に

XXVIII
Aquí termino (1949)

 インカ

 アメリカ・インディオ文明のなかで、古代ペルーのインカ帝国の文明ほどに魅惑的で謎にみたものはない。当時、周期的に飢饉にみまわれる世界にあって、インカ帝国は、農業の発展、収穫物の貯蔵、消費の調節、広大な流通網の整備などによって、飢饉を知らない国であったという。

 南部は すばらしい黄金色だった
 天の戸口にある
 マチュ・ピチュの孤独な高みは
 油と歌声に みちみちていた
 人間は 高い山の
 大きな鳥たちの巣をこわし
 頂きにひらいた新しい土地で
 農民は とうもろこしの実をもいだ
 霜焼けのした指で

 ここに歌われている「人間」──インカ帝国の名もない「人間」は、神官でもなければ戦士でもなく、素朴な農民である。マチュ・ピチュのような山の高みで、とうもろこしを育て、「霜焼けの指」でとりいれをした農民である。

 山のテラスの段段畑のうえに
 高地のとうもろこしが芽を出した
 そして 火山の道を
 壷や神神が往き来した

 「火山の道」──インカ帝国の道路網は一万六千キロメートルにわたったといわれる。それはたんに火山の山腹を縫っていただけでなく、それ自体が火山の溶岩のように、山項から台地や谷間へと蛇行していた。とうもろこしを入れた重い壺を背負った運搬人たちが蟻の行列のようにつづいた。この行列こそが、飢餓の問題を解決したインカの栄光を物語っていたのだ……しかしインカの牧歌のなかにも、苦しみにみちた秘密がかくされていた。長詩『マチュ・ピチュの高み』がその手がかりとなる。

(『パブロ・ネルーダ』──『大いなる歌』)
 マヤ─チチェン・イッツア

 つづいてマヤ文明が歌われる。

 マヤ族よ きみたちは
 偉大な知識の樹を 切り倒した
 とうもろこしの部族のかぐわしい匂いのなかに
 研究と死との 構造が築かれた
 チチェンよ おまえのざわめきは
 密林の夜明けとともに 湧きあがった
 労働は次第に おまえの黄色い城砦のなかに
 蜂の巣穴の均斉(シムメトリー)をつくりだし
 思索は 台石の血をおびやかし
 くらやみの天空を探り
 医学をみちびきだし
 石のうえに記録をきざんだ
 
 ここには、マヤ文明の驚異的な発展がうたわれている。九世紀頃に築かれたといわれるチチェン・イッツアは「マヤのメッカ」と呼ばれる首都で、数学、天文学、医学などの知的活動を始めたことで知られる。こんにち、このチチェン・イッツアの大遺跡は、メキシコ・ユカタン半島の緑のジャングルのなかに埋もれながら聳えている。目のくらむような傾斜の急な階段をもってそそり立ったピラミッド神殿。崩れかけながら、ジャングルのうえにそびえている天文台。神秘をひめた「いけにえの泉」。・・・
 ネルーダがチチェン・イッツアに呼びかけたこの詩の最初のイメージ──「おまえのざわめきは/密林の夜明けとともに 湧きあがった」というのは意味深い。それは人類の知的活動の夜明けが、密林の夜明けと同時代であった、という意味である。
 「いけにえの泉」が示すように、マヤ文明にもまた血なまぐさい迷信があったことをネルーダは知っている。しかしネルーダはマヤ文明を特徴づけるヒュマニスム、知的探求、科学的前進を強調して、これを歌っているのだ。

(『パブロ・ネルーダ』──『大いなる歌』)
 アステカ

 第一章『地上のランプ』の「人間たち」という詩は、古代および中世の南アメリカの諸部族について書いている。そのなかでアステカ文明についてはこう歌われている。

 アステカの階段を
 目にもまばゆい 雉子の群のように
 神官たちが しずしずと降りてきた
 ・・・ 断末魔の呻きと風のなか
 石に石を積み重ねた 荘厳なピラミッドは
 威圧的なその体積のなかに
 犠牲(いけにえ)の心臓を 巴旦杏のように閉じこめた
 わめき声にも似た 雷鳴のなか
 血は 神聖な階段をしたたり落ちた

 ここには、アステカにおける宗教的儀式の豪奢なきらびやかさとピラミッド神殿の壮大さが歌われていると同時に、その専制的な権力の強大さと犠牲(いけにえ)を捧げる宗教的な残酷さがあばかれている。アステカ王国は盲目的な神権政治と血なまぐさい蒙昧主義のうえに成り立っていた。巨大な神殿をきずいた建築家たちのすばらしい芸術も、迷信による圧制を正当化することはできない。
 このアステカの圧制にたいして、ネルーダは、名もない多くの部族民たちのつつましやかで平和を日常生活を──その農耕や手仕事などを対置している。

 けれども もろもろの部族の人民は
 繊維を織り 収穫(とりいれ)のために精を出し
 色もまばゆい羽根を織り トルコ玉を磨き
 そして 織物の模様のなかに
 この世の光を 織り出した

 ここには、素朴な人民の活気と活力にみちた労働の姿が描かれている。そして彼らの作りだした物の美を──「この世の光」をうたっている。

(『パブロ・ネルーダ』──『大いなる歌』)
遺言
遺言
<『ネルーダ詩集』─わが来歴 >
  大きな悦び
                    パブロ・ネルーダ

むかし追い求めていた影などには もう用はない
おれには あのマストの 二重の悦びがあるのだ
森の遺産であることと 海路の風を知ることと
そしてある日 この世の光のもとで決意したのだ

おれは 牢屋へぶち込まれるために書くのではない
百合の花などを夢中に探し求めてる若僧のために書くのでもない
おれは 素朴なひとたちのために書くのだ
この世の変らぬ要素の 水や月を
学校や パンや ぶどう酒や
ギターや 道具類などをほしがっている
素朴なひとたちのために 書くのだ

おれは 人民のために書くのだ たとえ
かれらが おれの詩を読むことができなくとも
おれの生活をひっくり返す 大気よ
いつか おれの詩の一行が
かれらの耳にとどく時がくるだろう
そのとき 素朴な労働者は 眼を挙げるだろう
坑夫は 岩を砕きながら 微笑みをうかべ
スコップを手にした労働者は 額をぬぐい
漁師は 手のなかで跳ねる魚が
いつにもましてきらきらと輝くのを見
さっぱりと からだを洗ったばかりで
シャボンの匂いをふりまく 機関士は
おれの詩に じっと見入るだろう
そうして かれらは きっと言うだろう
「これは 同志の詩だ」

それだけで たくさんだ
それこそが おれのほしい花束だ 名誉だ
ねがわくば 工場や炭坑の外でも
おれの詩が 大地に根をおろし 大気ととけあい
虐(しいた)げられた人たちの勝利に結びついてくれるように
ねがわくば おれが ゆっくりと
金属で作りあげた 堅い詩のなかに
だんだんと 箱をひらくように
若者が 生活を見つけだし
そこに こころを打ち込んで
突風(はやて)に触れてくれるように
  
その突風(はやて)こそ 風の荒れ狂う高地での
おれの悦びだったのだ

<角川書店「ネルーダ詩集」─大いなる歌 第三巻>
ぶどう酒
                    パブロ・ネルーダ/大島博光訳

春のぶどう酒・・・秋のぶどう酒
仲間(とも)よ おれといっしょに テーブルをかこもう
秋の彼岸の 木の葉の散りかかる テーブルを
すると この世の大きな流れは
ざわめきながら 遠のいてゆく
おれたちの歌ごえから 遠く

おれは きみのよい仲間なのだ

きみが この家に入ってきたのは
ちょっとばかし きみが巻きあげられるためではない
いや きみはここから出てゆくとき きっと
おれから ちょっとばかし持ってゆくだろう 
栗の実や 薔薇や
木の根のやすらぎや 帆船のこころよさを

仲間(とも)よ それらをこそ
おれは きみと分ちあいたかったのだ

仲間(とも)よ いっしょに歌おう コップがひっくりかえり
テーブルのうえに 赤い酒が流れるまで
この蜜は 大地から ほの暗い枝の中をとおって
きみのくちもとへと やってきたのだ

何がおれに欠けているというのか 影にみちた歌よ
仲間(とも)らよ おれは きみらを ざっくばらんに愛した
さあ おれの生活から引きだして 進ぜよう
肌を刺しもするが 優しい茂みのような友情を

握手しよう また会おう
うんと素朴になって おれのことばのなかに
裸の草木の発散するものだけを 探してくれたまえ
なぜきみは 労働者に要求する以上のものを
おれに要求するのだろう?
きみはもう 知っているはずだ

おれが一所懸命に働いて 地下の仕事場をつくりあげたのを
そうしておれが 自分の言葉でしか話したくないのを

もしも 風が気にいらなかったら
医者をさがしに ゆきたまえ

おれたちは ぴりっとする大地の酒をのんで
歌おう 秋のコップをかちあわせよう
ギターや 静けさが運んでくるだろう
愛の歌を この世にない河のことばを
みんなにもてはやされる 意味のない歌を

<角川書店「ネルーダ詩集」─大いなる歌 第三巻>
『大いなる歌』
 ここでネルーダの代表作ともいうべき詩集『大いなる歌』を見ておこう。この詩集はラテン・アメリカ詩ばかりか、世界詩の傑作のひとつである。一九七一年のノーベル文学賞はネルーダに授与されたが、それも『大いなる歌』に与えられたとも言えるだろう。
 ネルーダが『大いなる歌』の構想をいだいたのは、第二次大戦のさなか、一九四三年の秋、メキシコからの帰国の途中、グアテマラやペルーのマチュ・ピチュ大遺跡などを歴訪してのことである。一九四五年には第一章の「地上のランプ」と第二章の「マチュ・ピチュの高み」ができあがり、一九四八年からは、ヴィデラの追及をのがれた地下生活のなかで書きつづけられた。それは、雪の野のあばら家で、アンデスのきこり小屋で、バルパライソの貧しい水夫の家で書かれ、また船のうえで書かれ、汽車のなかで書かれた。こうしてこの彪大な詩集は、この世のあらゆる光と影をうたいあげ、きわめて多様な生活と現実を反映することになる。そしてこの詩集が刊行されたのは一九五〇年である。
 『大いなる歌』においては、題名の示すように、全般的・全体的な世界がうたわれ、あらゆる主題が追求されている。そこには、新大陸の創世記・大自然の地理、動物、植物がうたわれ、南アメリカ諸国と諸国人民のいりくんだ民族の歴史、スペインの征服者たちに反抗してたたかった戦士たち、解放者たちの英雄像などがうたいこめられている。この詩集はまさに新大陸のエンサイクロペディアであり、その宇宙創生史である。そしてこの詩集の偉大さは、アメリカ諸国人民の解放と自由を声高く、また声深く呼びかけているその壮大なスケールにある。

<新日本新書『パブロ・ネルーダ』>

 きこりよ めざめよ

一九四八年にかかれた『きこりよ めざめよ』は、『大いなる歌』の第九章をなしている。

  コロラド河の西に おれの愛する土地がある
  そこに おれは駆けつけるのだ
  おれの身うちを 脈うち流れるもの
  おれの過去と現在と おれの背負っているすべてをもって

 こうして始まるほぼ七〇〇行の詩によって、ネルーダは北アメリカに呼びかける。第二次大戦は終わったが、早くもアメリカ帝国主義が、世界のうえにその黒い影をもってのしかかっていた。その危険をいちはやく見てとった詩人は、北アメリカの人民によびかけると同時に、アメリカ帝国主義の本質をあばいて、警告を発しているのである。
 「きこり」とは、貧農の子として生まれ、幼い時から斧をふるって山林をきりひらいたエィブラハム・リンカーンを指すと同時に、アメリカ人民を意味していることはいうまでもない。

  北アメリカよ おれたちが愛するのは
  おまえの仮面ではなく おまえの平和だ
  ・・・
  おれたちが愛するのは オレゴンの泥で
  手を赤く汚した男だ
  ・・・
  西部の開拓精神だ
  蜂蜜のとれる 平和な村だ
  ・・・
  おれたちが愛するのは おまえの労働者の血と
  油だらけの人民の手だ

 それは、ウォルト・ホイットマン、ポオ、シオドア・ドライサー、シンクレア・ルイスなどを生んだ人民のアメリカである。

  もう遠いむかしから 大草原の夜空の下
  静まり返った水牛の皮の上には
  おれたちの生まれる前にいた人たちの
  言葉や歌が鳴りひびいていた
  メルビルは 海べの松だ その枝から
  龍骨と腕木といっそうの舟が生まれた
  かぎりもない穀物のようなホイットマン
  暗い数字にとじこもったポオ
  ドライサー ウルフ
  かれらは おれたちの生まれる前のなまなましい傷口だ
  また近くはロックリッジが 土の奥に葬られ
  そのほか どんなに多くのものが
  くらやみのなかで眠っていることか……

 詩人は、このように人民のアメリカをなつかしく思い描いているが、みずから世界の憲兵とうぬぼれて、世界の人民に暴虐な戦争をしかけようとするアメリカ帝国主義には、手きびしい警告を投げている。

  だが 北アメリカよ
  もしもおまえが ごろつきどもに銃をもたせて
  この清らかな国境を破壊しょうとするなら
  そしてシカゴの牛殺しを連れてきて
  おれたちの愛する音楽と秩序を支配しようとするなら
  おれたちは 石のあいだ 大気の中から飛び出して
  おまえに噛(か)みついてやる
  最後の窓から飛び出して
  おまえに火を浴びせてやる
  深い波の底から躍り出て
  棘(とげ)でおまえを釘づけにしてやる
  畑の畝(うね)から躍り出て コロンビア人の拳のように
  種蒔(たねま)きの手で ぶちのめしてやる
  おれたちは外に飛び出して パンも水も拒んでやる
  躍り出て 地獄の火でおまえを焼いてやる

  だから 兵士よ やさしいフランスの土地には
  足を踏みいれるな なぜなら
  葡萄畑が二度と踏み荒されぬように
  おれたちがそこに見守っているからだ
  そして貧しい娘たちが まだなまなましく残ってる
  ドイツ人の血の跡をおまえに指(ゆび)さすだろう
  またスペインの 鋸(のこぎり)の歯のような乾いた山脈(やまなみ)をよじ登るな
  石のひとつひとつが火となり
  勇士たちは千年も戦うだろう
  そしてオリーヴの林にも迷い込むな
  おまえは二度とオクラホマにもどれないだろう
  ・・・

  アメリカ帝国主義の侵略の野望をあばいた詩人は、これらウォール街の死の商人たちをうちのめすために、エィブラハム・リンカーンのかがやかしい民主主義的伝統にめざめて立ち上がるように、アメリカ人民によびかける。

  そんなことがひとつも起こらぬように
  ・・・

  きこりよ 眼をさませ

  エィブラハムよ やって来い
  やってきて 古いパン種をふくらませろ
  イリノイの 黄金(こがね)と緑の大地をよみがえらせろ
  人民のなかに立って 斧をふりかざせ
  新しい奴隷主義者に向かって
  奴隷をむちうつ鞭に向かって
  毒をふりまく印刷所に向かって
  かれらのつくろうとする
  血まみれの市場に向かって
  白人の若者も 黒人の若者も
  歌いながら 微笑みながら 進め
  ドルの壁をつき崩し
  憎しみをあふりたてるものに抗し
  かれらの血で肥る商人に抗して
  歌いながら 微笑みながら
  勝利をめざして堂堂と 進め

  きこりよ 眼をさませ

 『きこりよ めざめよ』の最後の章は、平和の歌によってしめくくられている。戦争によってぼろ儲けを企む、ひとにぎりの死の商人とは逆に、働くすべての人民は、平和をこころから願っている。詩人は「わたしの信条は 平和と希望なのだ」とも語っている。

  日ごとに訪れる 夕ぐれに 平和あれ
  橋のうえに 平和あれ 洒に 平和あれ
  わたしの使う言葉に 平和あれ
  そしてわたしの胸にのぼってきて
  土の匂(にお)いと愛にみちた 古いむかしの歌を
  くりひろげてくれる 言葉に 平和あれ
  パンの匂いで眼がさめる
  朝がたの都会(まち)に 平和あれ
  ・・・
  スペイン・ゲリラの
  ひき裂かれた心臓に 平和あれ
  そこでは ハートの刺繍(ししゅう)のある座布団が
  いちばん なつかしい
  ワイオミングの小さな博物館に 平和あれ
  パン屋と かれの愛に 平和あれ
  小麦粉のうえに 平和あれ
  やがて芽を出してくる麦に 平和あれ
  茂みを探す 恋びとのうえに 平和あれ
  生きとし生けるものに 平和あれ
  すべての大地と 水のうえに 平和あれ

 さらにこの詩の最後を、ネルーダは祖国チリへの祖国愛と、人間味にあふれた人民への友愛とによって結んでいる。それは、この詩をつらぬいているけだかい国際連帯の精神ときりはなしがたく結びついているからである。

  わが祖国では 坑夫たちが牢獄にぶちこまれ
  軍人どもが 裁判官をあごで使っている
  だがわたしは この寒くて小さい
  わが祖国を 根っこまで愛しているのだ
  たとえ 千回 死のうとも
  わたしは わが国で死にたい
  たとえ 千回 うまれようとも
  わたしは わが国に生まれたい
  あの未開のアラウコ族のそばに
  南極の風が 猛り狂うところ
  教会の鐘楼が 新しく建てられたばかりの処に
  ・・・
  わたしのねがいは
  坑夫も 娘さんも
  弁護士も 舟乗りも
  人形作りも みんな
  わたしといっしょに来てくれることだ
  われわれはみんなで映画館にはいろう
  そして映画がはねたら
  赤い葡萄酒を 飲もうではないか

  わたしは何も問題を解決しにきたのではない
  わたしはここに 歌うために きたのだ
  きみたちといっしょに歌うために──

(大月書店「愛と革命の詩人ネルーダ」『大いなる歌』)

 また、『レカバーレン』という詩では、チリ共産党の創立者ルイス・エミリオ・レカバーレン(一八七六─一九二四)の共産主義的人間像と、チリ共産党が誕生するにいたる歴史的必然性とが、リアルに感動ぶかく描かれている。

  レカバーレン

その名はレカバーレンと呼ばれた

ひとがよくて がっしりとして 恰幅(かつぷく)がよく
澄んだまなざしと ひきしまった額をもち
大きなからだは
ひろい砂漠のように
力にみちた鉱脈をおおっていた

・・・

この人民の指導者は
パンフレットをたずさえて やってきた
ひとりぼっちの男や うちひしがれた者
穴だらけの毛布で
うえた子供をくるんでいた者
非道な仕打ちでうちのめされた者を
そっと わきへ呼んで
かれは 言った
「おまえの声を ほかのひとの声とあわせろ
おまえの手を ほかのひとの手と組みあわせろ」

・・・

しいたげられた すべての人びとがやってきた
悲しい しゃがれ声をだす 幽霊のように
泣きごとをならべる すべての人びとがやってきた
そしてかれらは かれの教えをきいて
いままでの自分からぬけ出て
あたらしい 誇りにみちた人間にかわった

そのことが 草原じゅうに 知れわたった
かれは 国じゅうを歩きまわって
民衆と胸をひらいて話しあい
絶望にしずんでいるひとびとを立ち上らせた
かれの新聞は 印刷されるやいなや
炭坑の奥にもちこまれ
高い銅山のうえに運びあげられ
ひとびとは一字一字 食いいるように読んだ
それは ふみつけられたひとびとの声を
はじめて支持し 主張した新聞であった

かれは ばらばらに孤立していた人びとを組織した
かれは 拷問部屋のなかにまで
本や歌をもちこんで
不平不満を ひとつまたひとつと よせ集めた
こうして だまりこんでいた奴隷たち
苦しみにうちひしがれていたひとびとが
自分に名まえをつけ 自分を人民とよび
プロレタリアートとよび 労働組合とよび
堂堂とした一人まえの人間となった

この 生まれかわった住民
この 闘いのなかで きたえられたもの
この 勇敢な組織
この 不撓不屈の努力
この 錆びることのない鋼鉄
この 苦しみの結合
この 人問の砦(とりで)
この 明日をめざして伸びる道
この はてしない山脈
この 萌える新緑の春
この 貧しいひとびとのたたかいの武器
みんなの 苦しみから生まれでたもの
祖国の奥そこから うまれでたもの
辛抱づよいものから ふみつけられたものから
高貴なものから 永遠のものから 生まれでたもの
それには「党」の名まえがつけられた

共産党

これが その名まえであった
たたかいは はてしなかった
黄金をもった支配者どもは
禿鷹のように 党におそいかかった
かれらは 中傷をふりまいて挑みかかった
「共産党は ペルーや ボリヴィアなど
外国から 金をもらっているぞ」
かれらは 活動家たちが汗をたらして
買いとった印刷所を襲撃し
ぶちこわし 火を放って焼きはらい
人民の印刷機を めちゃくちゃにした
かれらは レカバーレンを迫害し
旅券をとりあげ 通行を禁止した
しかしかれは 人気ない地下に
たたかいの種子(たね)をかくした
党のとりでは かたく守りぬかれた

・・・
レカバーレンの手によって組織された
かがやく 党の赤旗は
炭坑から村へとすすみ
村から町へと ひろがり
鉄道線路とともに伸び
農村地帯に しっかりとした拠点をつくり
街や 広場や 農場にひるがえり
ほこりだらけの工場や
春たけなわの野にひるがえった
こうして団結の時代がはじまり
みんなが 勝利のために 歌って たたかった

・・・

(大月書店「愛と革命の詩人ネルーダ」『大いなる歌』)

ユナイテッド・フルーツCo.
                      パブロ・ネルーダ
                      大島博光訳

トロンペットが 鳴りひびいたとき
地上では すべての準備がととのっていた
そこでエホバは この世界を分けてやった
コカコーラや アナコンダや
フォード・モータースや その他の会社に
ユナイテッド・フルーツCo.は
いちばん肥(こ)えた土地を 手に入れた
わが国の 中部沿岸地方を
アメリカの 甘美な腰の部分を

かれらは 自分たちの土地を
新たに 「バナナ共和国」と名づけた
そして 眠ってる死者たちのうえで──
また あの偉大や自由や旗をたたかいとりながら
安らかに眠れぬ英雄たちのうえで
     
かれらは じゃかすか 喜歌劇を おっ始(ぱじ)めた
かれらは 企業精神を奮い立たせ
シーザーのように 月桂冠を与え
貪欲な利潤追求を けしかけて
蠅どもの独裁をうちたてたのだ
トルヒーヨという蠅ども タコスという蠅ども
カリアスという蠅ども マルティネスという蠅ども
ウビコという名の蠅ども 貧しいものの血と
ママレードにまみれた蠅ども
人民の墓のうえで ぶんぶん唸(うな)りをあげる
酔いどれた蠅ども
サーカスのように 宙返りをする蠅ども
搾取圧制に秀(ひい)でた
手練手管(てれんてくだ)をこころえた蠅ども

これら 血まみれの蠅どものなかに
フルーツCo.は 錨をおろし
コーヒーと果物を積み込んで
その貨物船は 滑ってゆく
侵蝕された われらの国の宝ものを
満載した 盆のように

そのあいだにも おれたちの港港の
あま酸っぱい地獄で
靄(もや)につつまれた朝がた
インディオたちが 倒れてゆく
人間の肉体がひとつ ごろりと転(ころ)がる
それはもう 名まえもないがらくただ
地に落ちた ひとつの番号だ
挨捨(ごみすて)場に投げ捨てられた   
腐った果物の ひと房(ふさ)なのだ

(『大いなる歌』第五章「裏切られた砂」)

   *    *    *    *    *    *
『大いなる歌』の第五章「裏切られた砂」は、一九三〇年~四〇年代の南アメリカ諸国における独裁者たちの圧制、それらの独裁者を操っていたアメリカの帝国主義的多国籍企業の陰謀、搾取、支配の姿をあばいている。
(新日本新書「パブロ・ネルーダ」)
天上の詩人たち
                  パブロ・ネルーダ
                  大島博光訳

きみたちは何をしたというのか ジィド主義者たちよ
おりっぱな知識人よ リルケの弟子たちよ
神秘をでっちあげる いかさま師たち
実存主義の にせの魔法使たち
墓穴のなかに灯をともした
シュルレアリストのひなげしたち                                              
ヨーロッパの最新流行のモードを着込んだ屍(しかばね)たち
資本家のチーズに眼をやる 蒼(あお)ざめたきみたち

いったい きみたちは何をしたというのか
みんなが死の苦しみに呻(うめ)いているのを眼の前にし
あの 陰惨(いんさん)な人間の姿に 面と向い
人間の尊厳の辱(はず)かしめられるのを見
あの家畜小屋の寝藁(ねわら)にまみれた 人間や
足蹴(あしげ)にされた みじめな生活を眼の前にして

逃げだすほか 君たちは何もしなかった
きみたちは 山と積んだ紙屑を売った
きみたちは 探しまわった 天上の髪の毛を
萎(しお)れた植物を 折れた爪を
「純粋美」を 「呪文」を
現実から眼をそらした
あわれな 卑怯者(ひきょうもの)たちの仕事を
あの紳士(しんし)どもの 投げ与えた
汚らわしい 皿の残りもので こえ肥り
せんさいなひとみを 曇らせて──
断末魔の苦しみのなかに
石のように横たわったものが
そのひとみには 見えぬのだ
まもることも 闘いとることもできぬのだ
墓場の 花環よりも盲目(めくら)なのだ
並んだ 墓に  供えられた
じっと動かぬ 枯れた花花のうえに
しとしとと 雨が降るとき

──『大いなる歌』 第二巻(一九五〇年) 「寡頭政治」──

(「角川書店「ネルーダ詩集」)