ぶどう酒
パブロ・ネルーダ/大島博光訳
<角川書店「ネルーダ詩集」─大いなる歌 第三巻>
パブロ・ネルーダ/大島博光訳
春のぶどう酒・・・秋のぶどう酒
仲間(とも)よ おれといっしょに テーブルをかこもう
秋の彼岸の 木の葉の散りかかる テーブルを
すると この世の大きな流れは
ざわめきながら 遠のいてゆく
おれたちの歌ごえから 遠く
おれは きみのよい仲間なのだ
きみが この家に入ってきたのは
ちょっとばかし きみが巻きあげられるためではない
いや きみはここから出てゆくとき きっと
おれから ちょっとばかし持ってゆくだろう
栗の実や 薔薇や
木の根のやすらぎや 帆船のこころよさを
仲間(とも)よ それらをこそ
おれは きみと分ちあいたかったのだ
仲間(とも)よ いっしょに歌おう コップがひっくりかえり
テーブルのうえに 赤い酒が流れるまで
この蜜は 大地から ほの暗い枝の中をとおって
きみのくちもとへと やってきたのだ
何がおれに欠けているというのか 影にみちた歌よ
仲間(とも)らよ おれは きみらを ざっくばらんに愛した
さあ おれの生活から引きだして 進ぜよう
肌を刺しもするが 優しい茂みのような友情を
握手しよう また会おう
うんと素朴になって おれのことばのなかに
裸の草木の発散するものだけを 探してくれたまえ
なぜきみは 労働者に要求する以上のものを
おれに要求するのだろう?
きみはもう 知っているはずだ
おれが一所懸命に働いて 地下の仕事場をつくりあげたのを
そうしておれが 自分の言葉でしか話したくないのを
もしも 風が気にいらなかったら
医者をさがしに ゆきたまえ
おれたちは ぴりっとする大地の酒をのんで
歌おう 秋のコップをかちあわせよう
ギターや 静けさが運んでくるだろう
愛の歌を この世にない河のことばを
みんなにもてはやされる 意味のない歌を
仲間(とも)よ おれといっしょに テーブルをかこもう
秋の彼岸の 木の葉の散りかかる テーブルを
すると この世の大きな流れは
ざわめきながら 遠のいてゆく
おれたちの歌ごえから 遠く
おれは きみのよい仲間なのだ
きみが この家に入ってきたのは
ちょっとばかし きみが巻きあげられるためではない
いや きみはここから出てゆくとき きっと
おれから ちょっとばかし持ってゆくだろう
栗の実や 薔薇や
木の根のやすらぎや 帆船のこころよさを
仲間(とも)よ それらをこそ
おれは きみと分ちあいたかったのだ
仲間(とも)よ いっしょに歌おう コップがひっくりかえり
テーブルのうえに 赤い酒が流れるまで
この蜜は 大地から ほの暗い枝の中をとおって
きみのくちもとへと やってきたのだ
何がおれに欠けているというのか 影にみちた歌よ
仲間(とも)らよ おれは きみらを ざっくばらんに愛した
さあ おれの生活から引きだして 進ぜよう
肌を刺しもするが 優しい茂みのような友情を
握手しよう また会おう
うんと素朴になって おれのことばのなかに
裸の草木の発散するものだけを 探してくれたまえ
なぜきみは 労働者に要求する以上のものを
おれに要求するのだろう?
きみはもう 知っているはずだ
おれが一所懸命に働いて 地下の仕事場をつくりあげたのを
そうしておれが 自分の言葉でしか話したくないのを
もしも 風が気にいらなかったら
医者をさがしに ゆきたまえ
おれたちは ぴりっとする大地の酒をのんで
歌おう 秋のコップをかちあわせよう
ギターや 静けさが運んでくるだろう
愛の歌を この世にない河のことばを
みんなにもてはやされる 意味のない歌を
<角川書店「ネルーダ詩集」─大いなる歌 第三巻>
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