母とヴァイオリン

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 小学校の音楽の先生は山本先生といって少し気むずかしく、ライオンのような髪型でまるでベートーベンのようだった。授業中、子供が私語をすると厳しく注意するので、怖い先生として恐れられた。ところが母の指示で、僕はこの先生にピアノの個人レッスンをうけることになった。山本先生はクラシック音楽ファンの母と話が合ったのか、プロコフィエフのレコードを聴きに家に来たこともあった。
 山本先生の家は鉄条網で囲まれ、どう猛な犬が放し飼いにされている会社の敷地内にあった。真っ暗な中を猛犬に追いかけられながらの、悪夢のようにおそろしいレッスン通いであった。山本先生には指を直角にして鍵盤をたたくことをみっちり教えられたが、それだけではピアノを弾けるようにはならなかった。長く続かず、玉川上水の向こう側・武蔵野市にあるピアノ教室に変わった。今度の先生はお屋敷に住む小肥りのおばさまで、指の形のことは注意されなかったのでレッスンは順調に進んだ。
 ある時、山本先生が「ヴァイオリンを習っている人はいませんか?」とクラスのみんなに聞いた。誰もいなかったので、「母が習っています」と僕が言ったら山本先生はびっくりした顔をしていた。母はピアノの練習をあきらめた僕に「ヴァイオリンを教わってみない?」と誘ったのだが、ヴァイオリンのほうがもっと難しいと直感したのですぐ断った。そこで自らヴァイオリンの練習を始めたのだ。母がどこでいつまでヴァイオリンを教わったのかはわからないが、家族のまえで腕前を披露することはなかった。母がよく聴いていたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の有名な下りを耳にすると、クラシックが大好きで、音楽にもチャレンジ精神をもっていた母のことを思い出す。

ピアノ教室
山本先生とピアノ教室の子供たち

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