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大島秋光 「僕の母」(4)

ここでは、「大島秋光 「僕の母」(4)」 に関する記事を紹介しています。
 「老後」
 皮肉にもパーキンソン氏病で体の自由が利かなくなってやっとゆっくりした「老後」の時間をもてた母は、油絵や料理を始めたが外の世界にも未練があり、僕は時々ドライブへ最後になるであろう親孝行のつもりで連れ出した。ニッコウキスゲが見たいと霧が峰のヴィーナス・ラインヘ。鳥の声を聞きに富士スバルラインヘ、奥武蔵へ、榛名山へ、赤城山へ、入笠山へ、湯の丸へ、信州の西寺尾へ・・・。大体、二人だけのドライブであったが、そこで出会った風景はそれが彼女にとって最後の見納めとなったはずである。
 篠原病院に入院してまだ自分で食事が取れる一、二年ほどは毎日のように博光さんが訪ねて、おそらく入院患者の中では一番幸福な時間を味わえたのではないかと思うが、後半はだんだん意識もうすれ、悲しくも「生きたしかばね」となってしまった。しかし唯一のなぐさめは母が生を充分すぎるほど生き抜いて来たことだろう。僕もずっと母のように山や野をかけめぐり続けることだろう。

花見
花見
国際キリスト教大学にて

■今日の詩 「妻静江を送る」
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