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ヴァルモール 「A・L氏へ(抄)」

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 A・L氏へ(抄)
                 マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール/大島博光訳

この町が血に浸って恐怖に慄えおののいていたとき
爆弾や弾丸が 街通りという街通りを掃射し
早鐘がおびえて呻くように鳴らされていたとき
屋根の下で戦火を避けていた父親や子供たちを
赤い火の手が その長い腕をひろげて
その炎の腕を組んで 締めあげていたとき
わたしはそこにいた! 虐殺のためにきたえられた
巧みな死神が 穴倉を揺さぶってぶち壊し
残酷な足で 屋根組を踏んづけて崩しさり
卑劣にも 老人や若者や 清らかな揺りかごのそばで
案じ苦しむ母親の息の根にとどめをさしていたとき
そして母親の再び閉じた脇腹が墓穴と化したそのとき
わたしはそこにいて 炎のなかに死にゆく町の声を聞いていた
わたしは生きた心地もなく立ち会っていた
弾丸によって肉体から引き裂かれた魂たちの昇天に
なんと怖ろしい祭り もろもろの死の歌がひびいていた
喘ぐような鐘の音(ね) 太鼓の音 弾丸の音
石畳のうえに飛び散った血の 最後の叫び
それは見るも怖ろしかった それでもわたしの眼は
窓硝子にはりついて 空のなかを探しもとめた
その住みかを離れた魂が 血まみれになって
この泣き悲しむ世界のうえをさまよっていないか
私は耳傾けた もしか誰かが別れに私の名を呼んで
神へ逃げるようにと わたしを励ましてくれなかったかと
だが巣(ねぐら)は泣きわめいていた! しかも残忍な兵隊どもは
この下司どもは その恐るべき義務をはるかに越えて
まだよく目の見えない子供まで うち殺して
その口の中の まだ温かい乳まで赤く血で染めた・・・

叫びをあげる民衆の偉大さが わかりますか
はるか遠い姉妹たちの憐れみをもとめながら
経帷子(きょうかたびら)に その蒼ざめた半分を縫いつけながら
荒れ狂う市民戦争の 馬のひずめに踏みにじられ
虐殺された 一つの町の哀れさが わかりますか
経帷子(きょうかたびら)に包まれた町の冷たさが わかりますか
わたしたちが どの家の敷居に立ってみようと
わたしたちには この喪を悲しむ言葉もなかった・・・

<ワープロ原稿>
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