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アラゴン「幸福とエルザについての散文」

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幸福とエルザについての散文(抄)
                         ルイ・アラゴン
 
ああわたしには 秋の薔薇を語らないでくれ
わたしはいつも愛するのだ 若者の清らかな額(ひたい)を
あのまぶたのしたに秘めたアネモネ色の眼を
きみがさり気なく わたしの肩に頭をよせて
わたしにくれた春ゆえに わたしは生きる

きみへのわたしの愛は 何ものにもまさる
生を支える ほかのすべての理由にもまさる
きみゆえに わたしの生(いのち)は闇からよみがえる
きみゆえにわたしは生きる わが青春エルザよ
おお わたしの心の四季 色とりどりの光よ
エルザ わたしの渇き わたしの露よ

むかしはただ 反対することしか知らなかった
むかしはしょっちゅう 黒にばかり賭けていた
きみに逢わなかったら どうなっていたろう
時計の文字盤のうえで 止まっていた針は
きみに逢わなかったら 眠りの森の眠り男は
片言ばかり言っていたわたしは どうなっていたろう
                                         
すべてはきみのおかげ わたしはきみの挨(ほこり)でしかない 
わたしの歌のどの言葉も きみから出てきたものだ
きみがそこに足をおく時 足の下の石がわたしだ

わたしに栄光と偉大があるとすれば それはきみの常春藤(きずた)
わたしは きみがそこに自分を見いだす 忠実な鏡だ
わたしは きみの影であり きみの銅貨なのだ

この世のことどもは みんな きみから習った
それ以来 きみの流儀で この世を見てきた
すべてをきみから習った 泉で水を飲むように
夜空のなかの 遠い星ぼしを読みとるように
歌いながら道をゆく人から 歌をきき覚えるように
身ぶるいの意味まで わたしはきみに教わった

夜が明けて昼になれば 空は青く晴れるものだ
幸福(しあわせ)は 酒場の暗いランプのかげなどにはない
こういうことまで きみから教わったのだ
二人で生きるとはどういうことか もはや人は知らぬ
その現代の地獄で きみはわたしの手を執ってくれた
わたしの手を執って わたしを幸福な恋人にしてくれた

(飯塚書店『アラゴン選集』第三巻)
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