『蝋人形』の大島博光
大島博光の詩誌『蝋人形』に発表された自作詩・翻訳詩・翻訳文・評論・エッセイを「目次」からの抄出として書き出してみた。
昭和八年の『蝋人形』の九月号の「アルチウル・ランボー論」が初めての掲載であったと思われる。このとき大島は二十三歳で、早稲田大学在学中であった。翌九年の三月に卒業するが「ランボー論」は六月号まで九回に捗って連載される。若きランボー研究者の誕生であった。ちなみに小林秀雄のランボー『地獄の季節』が出版されたのは昭和五年である。まさに「ランボーは世界を覆っていた─エリユアール」と云えようか。
大島が『蝋人形』の編集を西条八十からまかされたのは昭和十年から戦争による休刊までの八年とされるが、「大島博光が蝋人形社に入社」と「編集後記」で確認されるのは昭和十二年の三月号である。
すでに昭和十一年二月から一年間「マルドロオルの歌」を翻訳連載している。ロウトレアモンとランボーというフランス近代詩の異端の詩人を若き大島は詩的視野とする。
昭和十二年九月号から昭和十四年四月号まで連載される「季節はづれの放浪」は、戦争へと閉ざされてゆく時代を逃れ出て詩の原野をさまようように書きつがれる。滝口修造によって評価され注目された詩の考察である。
すでにエリュアールの詩の紹介も継続して行なわれており、大島は多くの詩人の翻訳紹介をしているが、エリュアールに最も親近感をもっていたのかもしれない。
◎昭和8年(1933)(第四巻)九月号〜十二月号
9〜12「アルチウル・ランボウ傳」1〜4
◎昭和9年(1934)(第五巻)一月号〜六月号
1〜6「アルチウル・ランボウ傳」5〜9
○昭和10年(1935)(第六巻)三月号〜四月号
3,4「革命的神秘家ロオトレアモン」
6「スウルレアリズムの精神」・・・コピーあり
8「壁─星に」
◎昭和11年(1936)(第七巻)二月号から十二月号
2〜12「マルドロオルの歌」ロオトレアモン
8 詩「不眠のうた」
◎昭和12年(1937)(第八巻)
1「スュウルレアリスト」イリヤ・エレンブルク(エッセイ集「西方の作家達」を檬書房より出版)
2 詩「候鳥」「労働」「交流」
3「大海がある」フィリップ・スウポオ
4「サンボリズムの曲線に沿いて」ブルトン
4「渇」アルチウル・ランボウ
5「エレジイ」(ローマ字詩)
5「詩壇時評
5「冬について」・・・(「全詩集」に収録)
6「20世紀」アラゴン(ローマ字詩)
8 詩「私は歩いてゆく」
9「季節はづれの放浪(一)エスプリ・ヌウボオの道」
10「季節はづれの放浪(二)」
11「持続」エリュアル
11 詩「遠近法」
12「季節はづれの放浪(三)ダダ地方」
○昭和13年(1938)(第九巻)
1「壁にぶつけられた頭」エリュアル
2「季節はづれの放浪(四)ダダ地方」
3「眼に見えない獣たち」ジュウル・スエペルヴィエール
4「季節はづれの放浪(五)ダダの終焉とその足跡」・・・コピーあり
4「飢えの歌」・・・(「全詩集」に収録)
4「季節はづれの放浪(六)」
5「季節はづれの放浪(七)」・・・コピーあり
6「ランボオ」アンドレ・サルモン
6「季節はづれの放浪(八)」
7「夜の方に」「悔恨のように」 スウポウ
8「抉りとられた臓腑」
8「新刊書ノート」
8「季節はづれの放浪(九)」
9「季節はづれの放浪(十)」
9「新刊書ノート」
10「季節はづれの放浪(十一)詩人の使命」・・・コピーあり
11「季節はづれの放浪(十ニ)詩人とその時代」
11「新刊書ノート」
12「季節はづれの放浪(十三)言葉について」
○昭和14年(1939)(第十巻)
1「季節はづれの放浪(十四)詩と詩人について」・・・コピーあり
3「日本的をめぐつて」
4「季節はづれの放浪(十五)霊感について」
5「新刊書ノート」
11「毛の手袋抄」ルヴェルディ
11「私は思索するのではないノートするのである」
12「ある暮の季節」・・・(コピーあり)
○昭和15年(1940)(第十一巻)
1「詩人兵士へおくる詩」
3「夢の書物」
4「幸福の思想」
4「飢えの歌」・・・(「全詩集」に収録)
6「詩は無用である」
6「家もなく」・・・(「全詩集」に収録)
7「脚 エリュアル」
7「わが棘の高みに」・・・(「全詩集」に収録)
8「ボウドレエルの鏡」エリュアル
9「名まえなきものへ」・・・(「全詩集」に収録)
9「忍耐─ある夏の」ランボー
10「訣別」「よき民族のために」 ヘルダーリン
11「存在」エリュアル
11「本年度の本誌投稿作品の回顧」
12「石の窓より」・・・(「全詩集」に収録)
「耳は夢みる」・・・(「全詩集」に収録)
「雪の下で」・・・(「全詩集」に収録)
「消え去りし泉の歌」・・・(「全詩集」に収録、小山清茂曲)
○昭和16年(1941)(第十二巻)
1「私は何処にいたか」エリュアル
2「蒼き影みてる」・・・(「全詩集」に収録)
2「神々の家ギリシャの神殿」コシュアレス
2「黄昏の疲労」「悪しき言葉」エリュアル
3 詩「石切場の歌」・・・(「全詩集」に収録)
4「伊藤君を想ふ」
6「アルテウル・ランボウの生涯」ジャン・マリイニキアレ
6「手帖」
7「手帖(二)」
9「俳句と詩と」
11「わが夜の歌(一)」・・・(「全詩集」に収録)
11「手帖(三)」
「鴉はばたく」・・・(「全詩集」に収録)
「不思議の床」・・・(「全詩集」に収録)
「夜の虹」・・・(「全詩集」に収録)
○昭和17年(1942)(第十三巻)
1「わが夜の歌 第二の歌」・・・(「全詩集」に収録)
2「偉大なる追憶のために」
5「自然と詩人」
「わが夜の歌 第四の歌」・・・(「全詩集」に収録)
6「詩についてのノート(1)」
7「微風に寄す」・・・(「全詩集」に収録)
8「詩についてのノート(2)」
10 詩についてのノート(3)」
11「ルヴェルディの言葉(1)」
12「ルヴェルディの言葉(2)」
○昭和18年(1943)(第十四巻)
3「詩人の神秘家 ローラン・ド・ルネヴィル」
4「夜の歌(1)」
5「夜の歌(2)」
6「夜の歌(3)」
6「詩と神秘(1)」ルネヴィル
7「詩と神秘(2)」ルネヴィル
8「詩と神秘(3)」ルネヴィル
9「詩と神秘(4)」ルネヴィル
10「詩と神秘(5)」ルネヴィル
「音楽に寄す」・・・(「全詩集」に収録)
○昭和19年(1944)(第十五巻)
2「秋の歌」・・・(「全詩集」に収録)
(◎の4年分を保管)
(『狼煙』58号 「昭和モダニズム詩と大島博光」2006年10月に加筆)
大島博光の詩誌『蝋人形』に発表された自作詩・翻訳詩・翻訳文・評論・エッセイを「目次」からの抄出として書き出してみた。
昭和八年の『蝋人形』の九月号の「アルチウル・ランボー論」が初めての掲載であったと思われる。このとき大島は二十三歳で、早稲田大学在学中であった。翌九年の三月に卒業するが「ランボー論」は六月号まで九回に捗って連載される。若きランボー研究者の誕生であった。ちなみに小林秀雄のランボー『地獄の季節』が出版されたのは昭和五年である。まさに「ランボーは世界を覆っていた─エリユアール」と云えようか。
大島が『蝋人形』の編集を西条八十からまかされたのは昭和十年から戦争による休刊までの八年とされるが、「大島博光が蝋人形社に入社」と「編集後記」で確認されるのは昭和十二年の三月号である。
すでに昭和十一年二月から一年間「マルドロオルの歌」を翻訳連載している。ロウトレアモンとランボーというフランス近代詩の異端の詩人を若き大島は詩的視野とする。
昭和十二年九月号から昭和十四年四月号まで連載される「季節はづれの放浪」は、戦争へと閉ざされてゆく時代を逃れ出て詩の原野をさまようように書きつがれる。滝口修造によって評価され注目された詩の考察である。
すでにエリュアールの詩の紹介も継続して行なわれており、大島は多くの詩人の翻訳紹介をしているが、エリュアールに最も親近感をもっていたのかもしれない。
◎昭和8年(1933)(第四巻)九月号〜十二月号
9〜12「アルチウル・ランボウ傳」1〜4
◎昭和9年(1934)(第五巻)一月号〜六月号
1〜6「アルチウル・ランボウ傳」5〜9
○昭和10年(1935)(第六巻)三月号〜四月号
3,4「革命的神秘家ロオトレアモン」
6「スウルレアリズムの精神」・・・コピーあり
8「壁─星に」
◎昭和11年(1936)(第七巻)二月号から十二月号
2〜12「マルドロオルの歌」ロオトレアモン
8 詩「不眠のうた」
◎昭和12年(1937)(第八巻)
1「スュウルレアリスト」イリヤ・エレンブルク(エッセイ集「西方の作家達」を檬書房より出版)
2 詩「候鳥」「労働」「交流」
3「大海がある」フィリップ・スウポオ
4「サンボリズムの曲線に沿いて」ブルトン
4「渇」アルチウル・ランボウ
5「エレジイ」(ローマ字詩)
5「詩壇時評
5「冬について」・・・(「全詩集」に収録)
6「20世紀」アラゴン(ローマ字詩)
8 詩「私は歩いてゆく」
9「季節はづれの放浪(一)エスプリ・ヌウボオの道」
10「季節はづれの放浪(二)」
11「持続」エリュアル
11 詩「遠近法」
12「季節はづれの放浪(三)ダダ地方」
○昭和13年(1938)(第九巻)
1「壁にぶつけられた頭」エリュアル
2「季節はづれの放浪(四)ダダ地方」
3「眼に見えない獣たち」ジュウル・スエペルヴィエール
4「季節はづれの放浪(五)ダダの終焉とその足跡」・・・コピーあり
4「飢えの歌」・・・(「全詩集」に収録)
4「季節はづれの放浪(六)」
5「季節はづれの放浪(七)」・・・コピーあり
6「ランボオ」アンドレ・サルモン
6「季節はづれの放浪(八)」
7「夜の方に」「悔恨のように」 スウポウ
8「抉りとられた臓腑」
8「新刊書ノート」
8「季節はづれの放浪(九)」
9「季節はづれの放浪(十)」
9「新刊書ノート」
10「季節はづれの放浪(十一)詩人の使命」・・・コピーあり
11「季節はづれの放浪(十ニ)詩人とその時代」
11「新刊書ノート」
12「季節はづれの放浪(十三)言葉について」
○昭和14年(1939)(第十巻)
1「季節はづれの放浪(十四)詩と詩人について」・・・コピーあり
3「日本的をめぐつて」
4「季節はづれの放浪(十五)霊感について」
5「新刊書ノート」
11「毛の手袋抄」ルヴェルディ
11「私は思索するのではないノートするのである」
12「ある暮の季節」・・・(コピーあり)
○昭和15年(1940)(第十一巻)
1「詩人兵士へおくる詩」
3「夢の書物」
4「幸福の思想」
4「飢えの歌」・・・(「全詩集」に収録)
6「詩は無用である」
6「家もなく」・・・(「全詩集」に収録)
7「脚 エリュアル」
7「わが棘の高みに」・・・(「全詩集」に収録)
8「ボウドレエルの鏡」エリュアル
9「名まえなきものへ」・・・(「全詩集」に収録)
9「忍耐─ある夏の」ランボー
10「訣別」「よき民族のために」 ヘルダーリン
11「存在」エリュアル
11「本年度の本誌投稿作品の回顧」
12「石の窓より」・・・(「全詩集」に収録)
「耳は夢みる」・・・(「全詩集」に収録)
「雪の下で」・・・(「全詩集」に収録)
「消え去りし泉の歌」・・・(「全詩集」に収録、小山清茂曲)
○昭和16年(1941)(第十二巻)
1「私は何処にいたか」エリュアル
2「蒼き影みてる」・・・(「全詩集」に収録)
2「神々の家ギリシャの神殿」コシュアレス
2「黄昏の疲労」「悪しき言葉」エリュアル
3 詩「石切場の歌」・・・(「全詩集」に収録)
4「伊藤君を想ふ」
6「アルテウル・ランボウの生涯」ジャン・マリイニキアレ
6「手帖」
7「手帖(二)」
9「俳句と詩と」
11「わが夜の歌(一)」・・・(「全詩集」に収録)
11「手帖(三)」
「鴉はばたく」・・・(「全詩集」に収録)
「不思議の床」・・・(「全詩集」に収録)
「夜の虹」・・・(「全詩集」に収録)
○昭和17年(1942)(第十三巻)
1「わが夜の歌 第二の歌」・・・(「全詩集」に収録)
2「偉大なる追憶のために」
5「自然と詩人」
「わが夜の歌 第四の歌」・・・(「全詩集」に収録)
6「詩についてのノート(1)」
7「微風に寄す」・・・(「全詩集」に収録)
8「詩についてのノート(2)」
10 詩についてのノート(3)」
11「ルヴェルディの言葉(1)」
12「ルヴェルディの言葉(2)」
○昭和18年(1943)(第十四巻)
3「詩人の神秘家 ローラン・ド・ルネヴィル」
4「夜の歌(1)」
5「夜の歌(2)」
6「夜の歌(3)」
6「詩と神秘(1)」ルネヴィル
7「詩と神秘(2)」ルネヴィル
8「詩と神秘(3)」ルネヴィル
9「詩と神秘(4)」ルネヴィル
10「詩と神秘(5)」ルネヴィル
「音楽に寄す」・・・(「全詩集」に収録)
○昭和19年(1944)(第十五巻)
2「秋の歌」・・・(「全詩集」に収録)
(◎の4年分を保管)
(『狼煙』58号 「昭和モダニズム詩と大島博光」2006年10月に加筆)
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