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紙芝居 おじょっさまが行く(下)

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今日もおじょっさまはお弁当の入った小さいバスケットを持って村はずれの土手まで来ました。
川べりを歩いているとバチャン、バチャンと音がきこえてきました。片目はとじていて、
もう片方は黒目がまっ白なおばあさんが棒っきれで石の上の布をはたいています。
「おばあさん、何しているの?」「見りゃわかるだろう。せんたくだ!」「へえ、せんたく?」
「つったてねえで、そこの腰巻ほさんかい」 「はい!」

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おじょっさまはいそいで布のかたまりをかかえましたが、それからどうしたらいいのかわかりません、
おばあさんはたたいていた洗濯物を草の上に広げると、すみに大きな石をおきました。 
その時とつぜん強い風が吹いて大きな布は風にあおられ、おじょっさまの体をつつんでしまいました。 
「あ〜あ〜」「おめえ ここらのガキじゃねえな」 
おじょっさまは布にからまれもがいていたのですが目の見えないおばあさんにはわからないのです。

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ウォーンと昼のサイレンが鳴りひびきました。「びっくりした。何の音?」
「昼の合図だ、早く家にけえらねえと飯がなくなっちまうぞ」「私サンドイッチ持って来たの、おばあさん一緒に食べましょう」
おじょっさまはおばあさんの手にサンドイッチをにぎらせました。「なんだい、こりゃ、おめえこんなまずいもん、くってんか」
「大好きなの、おばあさんは何がすき?」 「そうさな、おら、みょうがのみそずけがへったにぎりめしが食いてえな」
「えっ? みようなみそずけ? 今度来る時 持ってくるわ」 

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「けさのさん、今日の散歩のお弁当はサンドイッチじゃなくて、みようなみそずけのにぎりめしを作って」 
「え?!みようなみそずけ? にぎりめし? それって、みょうがのみそずけでねえか? にぎり飯なんて
どこで覚えてきなすった。大奥様にしかられるます!」 それでもけさのさんはみょうがのみそずけの入った
にぎり飯を3コ作りました。4コめは、少し大きくにぎり
「これはおらのぶんだ。みょうがのみそずけのにぎりめしなんて久しぶりだもんな」

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みょうがのみそずけの入ったバスケットを持って、おじょっさまは久しぶりにおばあさんを訪ねました。
「おばあさん、今日はみょうなみそずけのにぎり飯を持ってきたの、一緒に食べましょうね」
 涼しい土手の上でお昼です。「うんめえなァ おら、こんなの何十年もくってねえよ、ああ、うんめえなァ」
食べているうちにおばあさんの見えない目から涙が流れていました。 

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「おばあさん、お名前は何ていうの」「おくまだ、おくま」「おじいさんはいないの?」「戦争に行ってビルマで死んだ」
「子供は?」「赤ん坊の時、チブスで死んだ」「まあ、お気の毒に」 
「おめえ、いってえ どこんちの子供だ?」「上屋敷の石川はな子」「何! じゃ石川ダメ三郎知ってるか?」
「おじいさまよ、でもダメ三郎じゃなくて、タメ三郎って言うの」
「あいつはな、鉄棒もとびっくらもダメだったから、皆ダメ三郎ってよんでいたんだよ」

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お盆が近づくと、大先生が帰ってきました。 おじょっさまは庭で大先生と花火をしながらおくまさんの話をしていました。 
「おくまさんか、なつかしいな。おくまさんの家は昔から村の中には住めなくて、水になるたびに家は流され、
気の毒な人なんだよ。それなのに運動がへたな私をよくかばってくれた。 そうだ、明日おくまさんの目を見てあげよう」 
「ほんと!!」おじょっさまは嬉しくて、思わず大先生のうでにしがみつきました。 

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よく朝さっそく2人はおくまさんの所に出かけました。 
「おばあさん、ダメ三郎さんをつれてきた」「何バカ言ってんだい。ダメ三郎はえらくなって東京にいるんだよ」
「おくまさん、お久しぶり、ダメ三郎だよ」「え!」 おくまさんはとつぜんにげ出そうとしました。 
「心配しないで、目を見に来たんだから」大先生はしばらくおくまさんの目を見ていましたが
「手術をすれば近くのものぐらい見えるようになる、どうかね。 私らと一緒に東京へ行こう。善はいそげというから」

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お盆も終り、大先生とおじょっさまが東京に帰る日がきました。見送りに来た村の人は大先生の
うしろから大奥様のおふるの着物を着たおくまさんが申し訳なさそうに出て来たのでびっくり! 
「おくまさんは東京で目の手術をします。見えるように[なったら、ここに戻りたいと言うので、
その時はあたたかくむかえて下さい」大先生のことばに皆からおどろきの声があがりました。 

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おじょっさまがいなくなると子ども達はすっかリ元の生活に戻ってしまいました。学校の帰り道もあばけっこ
をして土手からころげおちたり、びしょぬれになって、どじょうをつかまえたり、いじめも出てきました。 
話はかわっておくまさんのことですが、片目はよく見えるようになり、病院のやさしい看護婦さんや
今まで食べたことがない、おいしい食事になれて東京の施設で暮らすことになったそうです。 
おしまい

*紙芝居制作者の赤澤節子さん

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