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イヤホーンをとおして ──アジア・アフリカ作家会議東京大会で

ここでは、「イヤホーンをとおして ──アジア・アフリカ作家会議東京大会で」 に関する記事を紹介しています。
アジアアフリカ
アジア・アフリカ作家会議東京大会で壺井繁治らと 1961年3月

イヤホーンをとおして

  ──アジア・アフリカ作家会議東京大会で

わたしはいまイヤホーンを耳にしている
ここ 春さきの雪がとけさったばかりの
東京のまんなかの 国際ホールで
アジア・アフリカ作家緊急大会の一隅で

イヤホーンはわたしの耳をつないでくれる
二つの大陸から来た十八の国の作家詩人に
言葉もちがい膚の色もちがう代表たちが
抱いてきた十七億のひとたちの心と声に

作家詩人たちはひとつの声のように語った
人民が苦痛と屈辱の中にいる時われわれは
人民と肩を並べてペンと行動でたたかうだろう
いまや文学と政治とをひき離せはしない

イヤホーンを通して私の耳にも響いてくる
死と不幸をばらまく西風を吹き散らそうと
アジアの森 アフリカの草原に吹き起こり
太平洋を吹き越えてくる東風のうなりが

偉大なルムンバをムーミエを浅沼を殺した
おなじ一つの敵を指さしあばく怒りの声が
独立と平和のおなじ一つの叫びをあげる
十七億のひとたちの地ひびきのような声が

イヤホーンをとおしてわたしは聞くのだ
ひとりのルムンバのしかばねをふみ越えて
立ち上がった千四百万のルムンバたち
その怒りもなまなましいコンゴの叫びを

わたしは聞くのだ 奪われた民族の言葉で
たたかいの詩をロから口へと伝えながら
燃えるさばくで オリーブといちじくの森で
たたかいつづけているアルジェリアの声を

わたしは聞くのだ イヤホーンをふるわせ
わたしの心をもふるわせるラオスの叫びを
麻袋に詰められてメコン川に投げ込まれる
ビエンチャンの子どもたちの泣き叫ぷ声を

そして家族ぐるみ村ぐるみ焼き殺し焼き払い
沖縄基地のメースの射程をちらつかせて
SEATOの野獣をけしかけるやからと
血を流してたたかっているラオスの叫びを

だがまたイヤホーンはわたしに伝える
すでに勝利して大テンポの建設を歌いながら
金星ロケットのようにはげましてくれる
偉大なソビエトと中国の希望と友情の声を

あの偉大な六〇年の安保反対の闘争は
アジア・アフリカの闘争をはげましてくれた
二つの大陸の人民が連帯をうち固めるなら
一つの共同の敵を必ず追い払うだろう

そして作家詩人たちはひとつの声で語った
雪は降ったがそれは過ぎ去る冬のあと味だ
しあわせのためにペンをとるわれわれは
平和と自由の春を必ずたたかいとるだろう

(1961年10月3日「アカハタ」)
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