このような「人民連合」打倒の陰謀反乱のなかで、トロツキストたちの果たした危険な役割について、ネルーダはまた早くから予言的に警報を発している。
右翼のごろつきと 左翼のやくざは
おんなじ穴で いっしょにうごめく
人民の手から 勝利をもぎとろうと
おんなじ空の下で また出っくわすだろう
右翼の狂人どもと 左翼の阿呆どもとは
(「狂人どもと阿呆ども」)
しかし、張本人はむろんアメリカ帝国主義とそのカイライどもである。彼らがベトナムやチリで犯した言語に絶する不法な犯罪にたいして、この詩集ほどに痛撃をくらわしたものはない。
わたしは わたしの詩と真実をもって
怖るべき死刑執行人《ひとごろし》の 人民への憎悪と
ひとを恐れぬ犯罪を あばき懲《こら》しめてやろう
この死刑執行人《ひとごろし》は 腐ったドルとぐるになって
はるかに遠い 黄金《こがね》いろの国ぐにの
ゆたかな畑や村びとを 焼き払うのだ
(「ほかの主題にはおさらばだ」)
そしてこの詩集の最後の詩「われら声をあわせて歌おう」において、ネルーダがアロンゾ・デ・エルシージャの「アラウカニア」の詩句と自分の詩句とを組み合わせているのは意味ぶかい。アロンゾは一六世紀スペインの「黄金時代」の詩人で、チリ遠征に参加した。そのとき彼は、叙事詩『アラウカニア』のなかで、当時のチリ人民――スペイン侵略者にたいして勇敢に抵抗したアラウカニア人民の不屈な偉大さをほめたたえたのである。以下に引用するゴチック体の詩句が、アロンゾの詩句である。
一本の炬火《たいまつ》が アンデスの山なみに燃え立ち
一輪の薔薇が 燃えるように海べに咲き出た
こころをそそる いと豊かなる国チリ
こうしてついに おんみの星は解き放たれ
声もないくら闇から現われて 空高く昇った
はるか 遠い国ぐにも これをほめ賛えた
たとえ人民連合が 襲われ攻撃されようと
わが祖国チリは けっして抑えつけられず
外敵の支配にも 断じて屈服しないであろう
絶望的な悲劇のさなかにも、ネルーダはチリ革命の勝利をたたえ、チリ人民への信頼と未来をうたい、希望を高く掲げることを忘れなかったのである。
(この項おわり)
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