鋭い透きとおった詩で 仮借なき苛酷な心で
猛り狂った狂人ニクソンを 突き刺してやろう
そして来るべき未来の 人民裁判のために
おれは方ぼうの扉をひらき 国境を越えて
黙りこんでいる証人たちを 呼び集めた
血まみれの春に 仆れていった人たちを
(「鋭い透きとおった詩で」)
これらの詩句は、すでに、クーデター後の状況のために予言的に書かれたかのようにさえ見える。クーデターのさなか、ネルーダ自身も「血まみれの春に仆れていった人たち」のひとりであり、サンティアゴのサッカー場で虐殺された歌手ビクトール・ハラを始め、たくさんの殉難者たちもまた、ベトナムの死者たちとともに、ニクソンを裁く証人席についているのである。
こんにち、この詩集を読むと、チリ人民連合の闘争と勝利──つまりチリ革命の勝利、そうしてアメリカ帝国主義にあやつられたチリ軍部ファシストによるアジェンデの暗殺、チリ人民を血の海に投げこむにいたる卑劣な謀略、冷酷な暴力・弾圧などが、悲劇の日日の日誌のようにまざまざと描かれていて、いわば読者は、チリ人民のこの歴史的な悲劇の一時期《エポック》を追体験することになる。
一九七〇年九月四日、大統領選挙において人民連合の統一候補サルバドール・アジェンデは三六・三パーセントの得票によって勝利した。このチリの「新しい革命」を詩人は「多数派の赤い薔薇」と呼んで、胸をおどらせて歌っている。
こうして勝利は アジェンデとともに
競技場へ到着し 革命における奇蹟たる
合法的な チリ革命に たどり着いた
それは 勝利した多数派の 赤い薔薇だ
(プロレタリアートの分列行進のように美しい)わが共産党とともに わたしは行進した
…… (「勝利」)
いまや サルバードル・アジェンデが大統領となる
勝利の喜びに みんなが わくわく顫える
勝ち進む人民は すさまじい たつまき《﹅﹅﹅﹅》だ
(「一九七〇年九月四日」)
(つづく)
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