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『ニクソンサイドのすすめとチリ革命への賛歌』(1)

ここでは、「『ニクソンサイドのすすめとチリ革命への賛歌』(1)」 に関する記事を紹介しています。


 
ニクソンサイド1


(新日本新書『パブロ・ネルーダ』)
 
ニクソンサイド






『ニクソンサイドのすすめとチリ革命への賛歌』


 ネルーダはイスラ・ネグラの家に帰ると、さっそくチリ人民の闘争に参加し、詩を武器としてたたかう。そこで彼は戦闘の詩集『ニクソンサイドのすすめとチリ革命への賛歌』を書いて、一九七三年二月に刊行する。
 「ニクソン殺し《サイド》」というネルーダによる新造語は、むろんニクソンがベトナムでおしすすめていた「皆殺し作戦《ジエノサイド》」を皮肉ったものである。しかしニクソンはまたチリ革命の墓堀人でもあり、チリ民主主義を圧殺した陰の張本人──アメリカ帝国主義の公的代表でもあった。
 この詩集の「まえがき」にネルーダは書く。
「ニクソンは、人類にたいする叛逆行為において、あらゆる先任者たちの罪業を蓄積している。休戦条約の協定後に、かれが、世界史上もっとも残酷な、もっとも破壊的な、もっとも卑劣なベトナム爆撃を命令したとき、それは頂点に達した。
 かれはまたチリ革命を孤立化させ、崩壊させるために、経済封鎖をもって干渉した。
 そのためにかれは、いろいろの手下や、ITT(アメリカの多国籍企業・国際電信電話会社)のスパイ網のような公然たるスパイたちを使い、また一方では、チリを裏切ったチリ人ファシストどものなかの、もっとも陰険なもの、腹黒いもの、挑発者どもをも使った。
 このようにこの詩集の長い題名は、世界の現情勢と近い過去とを反映しているのである」
 ネルーダにとって、ニクソンの命令による冷酷なベトナム爆撃(一九七〇年五月)と、チリの人民連合政府と人民へのスパイやかいらいを使っての謀略攻撃とはひとつのものであった。ネルーダはアメリカ帝国主義の本質を見抜いていたのである。

ここでは 生きるか死ぬかが問題だ
もしも ごろつきをのさばらせておくなら

多くの人民が はてしない苦しみをなめ
大統領は 犯罪を犯しつづけるだろう
無辜のベトナム人民を 虫けらのように殺し
わがチリの税関から 銅を盗みつづけるだろう
(「ほかの主題とはおさらばだ」)

 こうしてネルーダは、まさに「アラウカニヤの石つぶて」のように痛烈で攻撃的な風刺によってニクソンを突き刺し、あばき、裁く。
(つづく)
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