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ああ 人民(ひとびと)の足もとに流れるのは──アラゴン『パブロ・ネルーダへの悲歌』

ここでは、「ああ 人民(ひとびと)の足もとに流れるのは──アラゴン『パブロ・ネルーダへの悲歌』」 に関する記事を紹介しています。


 
ああ人民の足もとに


(『アラゴン選集』 第Ⅲ巻 大島博光訳)
 
彫像




 ああ 人民《ひとびと》の足もとに流れるのは

ああ 人民《ひとびと》の足もとに流れるのは 酒ではなく
友よ それは われらの血なのだ
おし計《はか》ってもみたまえ 夜の深さを 降る雨を きみの涙を
われらは 降ったばかりの黄金の雪だ
おお 詩《ポエジー》よ

われらは あのむごい葡萄の収穫《とりいれ》のたぐいだ
われらは 咽喉《のど》をかっ切られた歌だ
われらは あの世紀未だ あの
九月の踊りだ
おお 搾り機よ 残忍な太鼓よ おお 哀れなわが腹よ
叫び声でないような詩は ひとつもない

きみは どこかで嵐のように生まれた
きみは その真珠のような眼のなかに
稲妻の思い出を秘めている
苦しむのに
きみは 時も場所も選ばなかった
きみが千の死に耐えようと そこがつねにきみの場所なのだ
そこがつねに きみの傷つく場所なのだ
他《ほか》の人びとのために坤めきうたうよう運命づけられた贖罪の口よ

われらは人間たちの歴史のなかに
苦しむというほか 何をしに来たのだろう
人間たちの狂気のなかに 何を探しに来たのだろう
われらは 思想や言葉で
いったい どんな罪を犯したというのだろう
きみは言う 夢みたくもないし知りたくもないと
存在しないようにときみに説教する者に向かって きみは要求する
生きようと努力せずに 生きたいと
きみは恐らく だれにもましていつも生きているのだ
「生と死の 両刃《もろば》のあいだに」
おお 詩人よ

きみの苦しみは終わらなかった 苦しみにつぐ苦しみよ
わたしもそうだ きみの声に耳傾け きみにこだまを返えす
わたしはきみの影法師なのだ
わたしの嘆きに投げるように
泉に 月はヒ首を投げる
(アラゴン『パブロ・ネルーダへの悲歌』) 
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