わたしは わが人生を
ルイ・アラゴン 大島博光訳
わたしは わが人生を
きみと向かい合って甘美に暮らした
そこではすべてが二つの意味をもつ
やって来るものは去ってゆく
昼は 夜となり
眠りは 不在となる
わたしの見るすべては
きみの声音(こわね)をきくと
最初の色合いから離れてゆく
きみの言うひと言(こと)は
午後
影と光を溶けあわせる
止った時間に
どうして耐えられよう
きみがわたしを愛してるとなお信じられようか
こころに とつぜん
もう秘めた想いのないときは
明日もないのだ わが魂よ
祈るものはだれもいない
叫ぶものもひとりもいない
われらはけれども愛し合ったと
車刑か 晒台か
報いがどれであろうと
どれもいちばん怖ろしい肉体的痛苦
わたしの手は火の中
それがみんなのねがい
わたしにとって愛が音楽であるかぎり
(詩集 『オランダの旅』一九六四年)
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