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剛直さと優しさ 大島博光詩集『冬の歌』   津森太郎

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津森太郎
 


(『赤旗日曜版』1991年7月21日)

りんご
 





剛直さと優しさ  大島博光詩集『冬の歌』

 この詩集には四十七編の作品が収録されているが、そのほとんどは『大島博光全詩集』(一九八七年)以後に書かれたものである。
 「きみは 柔らかいからだを弓なりにして/狂った若者を 受けとめてくれた/雪のなかに 泉を探していた牡牛は/きみの唇でやっと渇きを癒した」
 これは冒頭におかれている「愛について」の一連だが、あとにつづく詩行を見ると、弓なりになって著者をささえてくれたのは、現在パーキンソン病で入院中の静江夫人であることがわかる。詩集にはその静江夫人を歌ったものが多い。さきの時句にも見られるように、その愛の歌は表現が大胆であり、著者の率直な思いが出ていて、美しい抒情の世界を形作っている。それがこの詩集に深い陰影をあたえているのである。
 本書はⅠからⅦまで主題別に編まれているが、Ⅲの静江夫人とのことをうたった「冬の歌」をひとつの柱とすれば、もうひとつの柱は党およびそのたたかいを歌ったものであろう。それはⅤ「風刺の季節」、Ⅵ「わたしは党をうたう」などにある諸編である。
 それらの作品を読んでいると、これまで著者が精力的に紹介してきたネルーダ、アラゴンらの作品にある剛直さと優しさが、著者の作品そのものに流れているのが見えてくる。「人類の生そのものが問われているときこそ/『詩は実践的真理を目的とすべきだ』と」(「ヒロシマ・ナガサキから吹く風は」)と、著者は呼びかけている。それは核の問題だけにとどまるまい。
(津森太郎・詩人)
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