千曲川の詩
■大島博光の処女詩集は七十四歳の時の『ひとを愛するものは』で、この詩集で第十七回多喜二・百合子賞を受賞された。
私は頼まれて大島先生が七十六歳の特に出版された『大島博光全詩集』の編集をしましたが、『冬の歌』は全詩集以後の詩をまとめて八十一歳の時に出版されたものです。
『冬の歌』にある「千曲川 その水に」は詩誌『のろし』に発表されたものですが、大島先生も八十歳を過ぎて、ふるさとの松代や千曲川に愛着をもってきたのではないですかね。
その水はわたしの夢のなかを流れ
その水はわたしの血のなかを流れ
わたしの生まれるずっと前から流れ
わたしの死んだあとも流れつづけ
その水にわたしは生を飲んだのだ
千曲川よ
大島先生の千曲川への思いがこもっているフレーズだと思いますね。
■博光さんは釣りが好きで、行くと千曲川で鯉を釣り上げたってことを自慢して話してくれました。戦後にまた東京へ出て三鷹へいってからも多摩川によく釣りに行っていたようです。
庭に池があり、そこに多摩川で釣ってきたという鯉がいましたよ。吉祥寺で詩の集まりがあった時に「こんな大きな鯉がいる」と言ったら土井大助氏が「そんな大きくなかったよ」と言い返して笑ってましたけどね。
千曲川にも尾ッポの曲がった鯉やウグイが出たことが問題になったりしたが、博光さんは少年時代から千曲川で泳いだり魚をとっていたし、戦後に疎開してふるさとで暮らしていた頃にも千曲川でしよっちゅう魚を釣っていたのではないかと思う。
(戦後詩の出発につづく)
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