泣いている若者に
大島博光
新宿裏の暗い酒場の
暗い灯《ほ》かげでわたしは出会った
遠いむかしのわたしの影に
嘆き泣いてるあの若者に
宙に浮いた言葉のなかで
涙を救いとするような
この現実から眼をそらして
虹のような言葉のなかに
きみはうっとりただよっている
その悲しみや泣きのことばが
いったいどこからやってくるのか
まるっきりきみは気がつかない
きみは自由な市民のように
ふるまい歌っているけれど
まるっきりきみは気がつかない
きみの蒼ざめた手首のうえに
眼に見えずにめりこんでいる
奴隷のくさりの重い環に
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