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悦ばしき知識

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悦ばしき知識

(『早稲田文学』1939年5月)

*この頃『新領土』などに書いた詩は内向きの虚無的なものが多いのですが、この詩は一線を画しています。
 
こども





悦ばしき知識
                       大島博光   

いたるところ野獣は森をでて野を荒し
大地の皮膚は痙攣している
いたるところ風は吹き起り
救われた叫びを呑んで無限へ吹き去る
絶望のように

欲望の眼が愛へ通ずるように
苦悩の手は憎悪へ連なる

われらは槲《かしわ》の樹のうえに登ろう
そして影とざした胸を開き
はるか邪悪の野を越え
悦ばしき知識《ゲイ・シアンス》を迎えよう
緑の朝の窓のように
はるか尨大な憎悪を越え
青春の翼と舞踏を迎えよう

火と斧の季節は去るだろう
死が忘却へ去るように
しかし真理の宇宙には
如何なる季節もないだろう

冬の荒地に緑の種子蒔きを
不毛の季節に豊穣な収穫を

(『早稲田文学』1939年5月)
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