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紙芝居「松代藩8代藩主真田幸貫、参勤交代の地蔵峠越え」(下)

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無事険しい鳥居峠を越え、行列は真田町の宿泊先信綱寺に着きました。参勤交代の一行を迎えるため、真田町の各村も名主を中心に松代の関屋村とも頻繁に連絡を取り合い、準備をすすめていました。翌朝は早朝4時の出発でした。朝早いのに、松代から我妻隊が来て、鉄砲の音を空に響かせ、迎えてくれたのです。

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その頃、豊栄では全地域をあげて、350名あまりの昼食つくりに皆走り回っていました。警護役110名は竹皮つつみの握り飯2個、そこへ椎茸、かんぴょう、蓮根、里芋の煮物がつきます。これは桑根井(くわねい)、欠(かけ)、平林の3ヵ村の受け持ちです。240名方は料理万端取締役を置き、御飯方に喜助以下4名、料理方には女たちも米とぎ役、野菜等の洗い物役10名、補助として男達5名をつけました。配膳水の管理は関屋村と欠村です。

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今、殿様は7代藩主が完成させた鳥居峠から地蔵峠への道を通りながら喜びを感じていました。初代信之公も領地替えの時は、この地蔵峠を越えて松代に入りました。
「殿、いよいよ地蔵峠に入ります」の声に幸貫は籠の簾を上げさせました。
真田家とも縁のあるこの道をしっかり見ておきたかったのです。

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いつかうとうとしていた殿様は、籠が地面に置かれたわずかな振動で目を覚ましました。
「ついたか!」やっと自分の領地に入った安堵感が広がりました。
籠を降りた殿様の目の前に懐かしい飯綱山、戸隠山その下に広がる川中島平が目に飛び込んできました。
「これが私のふる里の景色だ!」殿様は思わず声に出したのです。

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高齢での16日間の旅を無事終えた殿様とご家老鎌原石見は、ここで袴姿の村人達の接待を受けました。
川中島平を見下ろしながら飲む一杯の熱いお茶に2人は生き返った思いがしました。
この後、白石新田でのお茶会は準備に5両もかけましたが中止になりました。

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地蔵峠の峰から明徳寺までの案内は関屋村の名主斧右衛門と、長(おさ)百姓伊宗太が、指示された(股引、脚絆、麻羽織着用、脇差)姿で、家老鎌原隊の先導は欠村(かけむら)頭主九右衛門、熊吉(袴、麻羽織、股立ち取)で待っていました。

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ここから欠村境までの通る道は脇街道御先立ほうき持参、掃除役が20名で掃き清めました。(参考:関屋村名、4カ村15名、人で不足で依頼したのが5名)
いよいよ最後の本陣明徳寺に着きました。明徳寺は曹洞宗で、松代城の初代城主高坂弾正(こうさかだんじょう)のお墓がある古いお寺です。ここでは殿様の行水の準備係まであったのです。行水のあと、殿様はゆっくりくつろいだことでしょう。

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本陣明徳寺での昼食、宴会には上級藩士も参列しての241名です。本堂の板の間から各部屋全部を使い、更にお膳所、料理所、板の間、長屋まで使いました。どこも明るい笑い声や話し声が響き、お寺には珍しい宴会となりました。
<参考:本膳…鉢肴・冬瓜・のり・小倉水・葉蕪・すし皿(だき合わせ)…冬瓜、さしみ、のり、岩茸、すし・汁平…がんもどき・椎茸・蓮根・人参・切芋、飯、酒4斗>

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殿様や家老達は本堂南のお座敷で二の膳付き。お酒も入り、旅の珍しい話に花がさきました。お土産は地元特産の長芋、当時は自然薯と言っていました。殿様には上5本、家老、道中目付役には中7本ずつでした。

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すべてが終わり、行列は一路城下へ。老中まで勤め上げた殿様の凱旋帰国を祝い、町の通りでは大勢の人たちが待っていました。お城では藩士達や町の三役が揃って出迎えたのです。その頃関屋村では、この一大事業を無事乗り越えた村人達と協力した各村の三役を招き、盛大な納会が開かれました。

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豊栄にもやっと静かな日々が戻ってきました。でも斧右衛門には最後の大仕事が残っていました。
まず斧右衛門が準備した100両の決算と、道普請(みちぷしん)の費用を、入会権(いりえけん)のある24ヶ村に分担し、請求することでした。

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これは斧右衛門が参勤交代のあとに部門別にまとめた古文書です。
特に8月8日は早朝から指示された袴姿で各宿泊先への起床時間のお知らせ役、お茶の運び役などの担当者の名前とその役の指示まで書かれています。緊張して慌ただしく動いた村人達の姿が見てとれます。

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斧右衛門はこの2年後(1848年)、68歲で亡くなりました。
戒名:大真院半翁良居士(だいしんいんはんおうりょうこじ)
   吾妻銀右衛門(1851年)77歲
   鎌原石見(桐山)(1852年)77歳
   真田幸貫(1853年)63歲

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文・絵 赤澤節子
2021年

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