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抉りとられた眼は抉りとる

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抉りとられた眼は抉りとる
                              大島博光
  
狂った大地の夜
嵐はすべての樹の枝を櫛けづった
暗闇の中
樹の葉は鳩のように翔びたった
しかし見えなかった
嵐は飛ぶ雲の中で笑い
濡れた土の上で
憑かれた影たちは格闘した。
沼のなかに草は揺れさわぎ
隠された地平線は歪められた
骨は骨に鳴り
影は影に重った
夜が夜に重るように

死の口の中
挙げられた手は裁りとられた
憎悪の額に
叫ぶ眼は抉りとられた
蔽われた歌声の底
蒼ざめた唇は漂う

剥げおちた壁の上
抉りとられた眼は投げつけられた
剥げおちた壁の上
はりつけられた眼は輝いた
とおく狼星《カニキウル》の光に
それは答えるように
答えるように
(『新領土』八号 一九三七年十二月号)
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