抉りとられた眼は抉りとる
大島博光
狂った大地の夜
嵐はすべての樹の枝を櫛けづった
暗闇の中
樹の葉は鳩のように翔びたった
しかし見えなかった
嵐は飛ぶ雲の中で笑い
濡れた土の上で
憑かれた影たちは格闘した。
沼のなかに草は揺れさわぎ
隠された地平線は歪められた
骨は骨に鳴り
影は影に重った
夜が夜に重るように
死の口の中
挙げられた手は裁りとられた
憎悪の額に
叫ぶ眼は抉りとられた
蔽われた歌声の底
蒼ざめた唇は漂う
剥げおちた壁の上
抉りとられた眼は投げつけられた
剥げおちた壁の上
はりつけられた眼は輝いた
とおく狼星《カニキウル》の光に
それは答えるように
答えるように
(『新領土』八号 一九三七年十二月号)
- 関連記事
-
-
地球儀 2022/09/15
-
沈黙 2022/09/14
-
抉りとられた眼は抉りとる 2022/09/09
-
修道轆(ローター) 2022/09/08
-
幸福 大島博光(新領土) 2022/09/05
-
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/5303-d7ffafb5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック