*日本軍のビルマ方面軍司令部が置かれたラングーンにそびえ立つシュエダゴン・パゴダ、日本兵はどんな思いで見たのでしょうか。
武井脩の霊に捧げた「《断崖の声》への鎮魂歌」で大島博光はこの詩を思い浮かべています。
君は行き 私は残る
荒れ狂う 嵐のなか
燃え狂う 戦火のなか
君は歌い 私はどもる
ふるさとを見つめる君の眼に
パゴダの塔は乳房のよう
南十字星は希望のよう
未来を見つめる君の眼に
ざんごうのなかで密林のなかで
君は歌う 雲雀の歌を
野獣への呪いの歌を
怒りわななく胸と手で
……
シュエダゴン・パゴダ
花岡脩(武井脩)
いつの日にか、この見えぬ鏡の曇り、
その翳れる光りもて 醒めし眼を蔽ひ、
ただよへる異国の匂ひに染みし汝が眠を
いと遠く、高貴なる森陰に運びゆくか。
パゴダよ、汝が豊かなる乳房を空は吸ひ、
なべての物象を浄め、塵芥にさへも、
汝が透明の微光をみづからの掌に照し、
終焉の日、隠れたる太陽は生れ出でぬ。
その日、されど陽は昏く、なべての照応は燻り
すべての枝々は、倚りかかりそよがぬ風を
涯しなく、地軸の扇に吹き流しぬ。
ああ 生命ながらへて、生誕の日、岸は船をとゞめ
燦として虚ろなる栄光のごとく、廃墟の街に、
シュエダゴン・パゴダよ、 汝が満ちみもし乳房は輝き出でぬ。
〈『蠟人形』第十四巻第十号(十一月号)一九四三年〉
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