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火をつけるな ─鳩の歌

ここでは、「火をつけるな ─鳩の歌」 に関する記事を紹介しています。
火をつけるな
                   ─鳩の歌

わたしは鳩だから どこへでも飛んでゆく
風のように 世界じゅう 飛びまわっている

見れば ほうぼうに 戦争がいついている
ミサイルが空をつん裂き 人間がふっ飛ぶ

まるで戦争はいつも 遠いところで起こって
新聞やテレビにのる 長くつづく物語のようだ

だがどんなに馴らされようと 戦争は戦争だ
硝煙がのぼり 戦車が走り ビルが崩れる

子どもを横抱きにして 走る 母親たち
血にまみれた裸の少女が 道で泣いている

それはベトナムであったり グレナダであったり
ニカラグワであったり レバノンであったり

沙漠を サヴァンナを前進する 迷彩服たち
世界の砂だまりにつくられる 巨大な蟻地獄

そこに黒い鷲の影があって ファシストがいて
殺されるのは いつも無辜の雀たちと自由だ

村も 街も そのまま 屍体置場となる
灼ける砂のうえで 血も涙も 乾いてゆく

武器のほとり まばゆすぎる太陽のしたで
眼もくちびるも バラとともにひからびてゆく

おお おのれの生を生きられなかったように
また おのれの死をも 死ねなかった人たち

だが地獄の日にも やさしい眼をしていた人たち
おお 墓もない 花束もない 裸の死者たち

それら死者たちの名において 火を放つな
丘のつぐみたち 野の牛たち 矢車草に

生きている者たちの名において 火をつけるな
小麦畑と雲雀たちに 珈琲畑とひなげしに

青空大の わたしの鳩小屋に 火を放つな
核の斧など振りかざして 火をあふりたてるな

(一九八四年「民主文学」)
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