一九三八年の初め、パリで国際シュールレアリスム展がひらかれた。エリュアールはブルトンと協力してこの展覧会を組織する。しかし、この二人のあいだの決裂は近づいていた。
ブルトンは一九三八年七月、メキシコを訪問し、そこで亡命中のトロッキーに会った。パリに帰ると、ブルトンは「国際独立革命芸術連盟」というトロツキストの組織を創設する。共産党に近づいていたエリュアールはブルトンの立場に反対を表明し、ここにブルトンとエリュアールの友情には終止符がうたれる。
一九三八年のある夜、シュールレアリストたちの集会がひらかれた。そのときの模様をジョルジュ・ユニェは書いている。
「ブルトンは相変らず自信にみちて、問題の核心に入った。要するに彼は、わたしがポール・エリュアールとの親しいつきあいをやめるようにと要求した。エリュアールが『ユマニテ』紙に詩を掲載したという理由で……わたしはひとからこういう最後通告のたぐいを受けるのが好きではない。茫然とするブルトンをしりめに、わたしはエリュアールとの絶交を拒否した……」
これでみると、エリュアールが「ユマニテ」紙に詩を発表したことが、ブルトンには耐えがたいことだったのがわかる。しかしこの決裂は、エリュアールが歴史的状況に触発されて、「一九三六年十一月」や「ゲルニカの勝利」(詩集『自然の流れ』に収録される)を書いた時に、すでに運命づけられていたのだ。エリュアールは長年にわたるブルトンの呪縛からようやく解放されたのである。詩集『自然の流れ』、詩・エッセイ集『見えるようにする』Donner àvoirを読むと、エリュアールがブルトンと訣別し、シュールレアリスムから遠ざかり、だんだんそこから離れてゆくのがわかる。
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