ミゲル・リティン監督を歓迎することば
大島博光
ようこそ ミゲル・リティン監督
ようこそ あなたは日本へやってきてくれました
血ぬられたサンチァゴの映像《イメージ》をかかえて
不屈な チリ人民の 怒りの声をたずさえて
ようこそ ミゲル・リティン監督
わたしたちはもう よーく知っています
あなたが 戒厳令の布かれたチりにもぐりんだ
あのスリルと 冒険と 勇気にみちた物語を
その勇敢な 物語の主人公を
わたしたちは 深い尊敬をもって歓迎します
あなたは ヒゲをそり落し マユを削り
パリの 高級仕立ての服をきこんで
イタリア製の 花模様のネクタイを結んで
ウルグヮイの ブルジョワ紳士に化けて
まんまと 敵の眼をあざむきとおしたのです
しかし 自分の生まれた祖国に
顔を変え 身をやつしてもぐりこまねばならないとは
なんと ファシスト・ピノチェットは
おぞましく 憎むべきものでありましょう
あなたは 堂々と モネダ宮を訪れて
アジェンデ大統領の 英雄的な最期をしのび
太平洋岸 イスラ・ネグラの海べに
まるで 鎖で縛られた人のように
柵でかこまれた ネルーダの家を訪れ
この偉大な人民の詩人をしのびました
「祖国と 人民のために死んだ 死者たちは
いまもなお 生きている」と
こうしてあなたは
ピノチェットの 血まみれの悪虐ぶりを
フィルムに やきつけ
ピノチェットのうしろに
三万二千二百メートルの ロバの尻尾をくっつけて
サンチァゴの空港から 舞い上ったのです
あの アンデスの空を飛ぶ コンドルのように
その 今にも倒れんばかりのピノチェットを
うしろから支えている 大きな黒い影を
わたしたちは よーく知っています
その黒い大きな影は また
わたしたちの国に 核基地をはりめぐらし
日本の首根っこをつかんで
無理難題を 吹っかけているのです
そうして わたしたちの日本にも
ピノチェットに劣らない ファシストがいて
海の向うの親分の言いなりになって
スキあらば 人民に襲いかかろうと
腹黒い陰謀をはりめぐらしているのです
ようこそ ミゲル・リティン監督
あなたの方の敵はまた わたしたちの敵です
共同の敵とたたかう 同志として
わたしたちは あなたを歓迎し
あなたの手を 堅く握ります
自由と 解放をめざす 共同の闘いのなかで
カメラ ペン 画筆を武器としてたたかう
芸術家同志として
わたしたちは あなたの手を堅く握ります
そうして あなたの前で あなたをとおして
あなたの愛する サルバドール・アジェンデと
偉大な詩人 パブロ・ネルーダに
わたしたちの深い敬愛を オマージュを ささげたいと思います
そうしてまた あなたの前で あなたをとおして
英雄的にたたかう チリ人民に
熱い 同志的な 連帯の挨拶を送ります
ベンセレーモス
堅く団結した チリ人民は
必ずや 勝利するでありましょう
一九八七年九月十日
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