♣思想的変遷―入党
しかし、アラゴンには矛盾と混乱がまだつづくのです。彼はこのころ、マルクス、エンゲルスの『共産党宣言』エンゲルス『家族、私有財産および国家の起源』レーニン『何をなすべきか』を読んで勉強しています。彼はやがて小ブルジョアの思想を克服して、決定的な階段を越えます。精神の自律・独立という個人主義的な幻想のかわりに、思想・芸術は経済的社会的現実に従属するというはっきりした意識をもつようになります。精神は、自由のない世界では自由ではありえないのです。精神の最初の義務は、精神の自由を保証する現実的条件を認識することであり、その現実的条件を廃棄する圧制とたたかうことです。アナーキスムはこの自由を確立するものではなく、その反対なのです。アラゴンは「精神のプロレタリア」のなかに書きます。
「アナーキスムは階級闘争の根本的問題を理解しない。じっさいに、あらゆるファシズムの根源であり根拠であるアナーキスムは反革命である。それは可能な、もっとも偉大な革命から革命的精神をそらさせるからだ」
これがアラゴンの思想がたどった論理です。しかし、アラゴンをフランス労働者階級の党の隊伍のなかへみちびき、その活動と闘争へみちびく道は、けっしてまっすぐなものでも平坦なものでもなかったのです。
「五年、わたしは五年を過した。わたしの友人たちとわたしが思い描いていた詩的世界への度外れの崇拝や、わたしが身を投げようとした大きな渦巻など、いろいろな小さな反発などに捉われて、ためらいと逆もどりの五年……」(『社会主義レアリスムのために』)
アラゴンはシュールレアリスムの根本矛盾について熟考を重ねます。つまり、シュールレアリスムは人間の全的解放をねがいながら、その解放に役立つ社会的諸条件をつくりだすための闘争には無力だという点です。詩に真の目的を保証するのは、この世界を変革することであり、この世界のなかで詩は意義をもち、また肉体をもつということをさとって、アラゴンは一九二七年一月十六日、共産党への入党を決意します。
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