死を歌いもつためには……
わが大島博光へ
西山克太郎
宇宙は全て彼の足下にひれ伏すであろうか。
彼は屈しない、生をすら屈させた、彼だから。
暗愁は大地《グルンド》から深淵《アブ・グルンド》へ沈んでいく。
苦行の情夫《ニボ・アンナンフェ》と、安楽死の花嫁との美しい媾交。
地球の夜にのしおりてくるソレルの掌。
私も屈しない、私は死をすら屈させたのだ。
何事だ──、私が私自身以上に愛するものが
あろうとは。
そこに苦悩が沈んでいる、こゝに蛇の舌が
もえている。
エボリューションの上におそいかゝるレボリューション。
悪が亡んでいく、幸福がまねく、白い年と汗する額。
氾濫する原点族よ、その歌は消えるか、消えるだろう。
小馬の背に乗って恐慌がやってくる。
ルムンバの屍の上を、全ての生がおゝうのだ。
静かな夜、ふたゝび静かな夜が戻ってくるだろう。
──六一年二月
(『角笛』18号 1961年4月)
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