抵抗運動にたちあがったチリ人民──軍事政権、新たな抑圧を画策
<チリ情勢>
軍事クーデタ以来すでに半年がすぎました。この間、軍事政権は非常時体制を継続し、抵抗運動への抑圧を強めて、国民からいっさいの民主的自由を奪っています。これにたいしてチリ人民は、地下活動中の人民連合組織の指導のもと各地で抵抗運動にたちあがりつつあります。
チリの首都サンチアゴの街頭で、メーデー前日の四月三十日夜、軍事政権打倒の闘争をよびかけるビラが厳重監視の目をかいくぐってまかれました。これよりさき港湾都市バルパライソでも、軍事政権の犯罪を告発する文書が発表されています。
また四月二十五日、チリのカトリック教会の司教二十八人が連名で声明を発表、軍事政権の政治囚にたいする拷問と人権じゅうりんを非難しましたが、これは、軍事政権による一連の軍事裁判の進行中に発表されただけに、重要な意味をもっています。
こうした抵抗運動は、チリの民主主義と自由が抑圧され人民の生活が破かいされるにつれてますます激化することが予想されます。
チリ労働者統一中央組織(CUT)の地下組織とチリ民主団体の共同調査によると、いまチリでは、全労働人口の二十%にあたる五十万人以上が失業し、しかも多くの失業者は思想差別で就職の機会をとざされています。
また、クーデタ以後の物価の上昇ぶりもすさまじく、食料品など生活必需品の値段は、クーデタ以来六カ月の間に二倍から十五倍もあがりました。パンの値段は三倍、食用油は六倍、砂糖は十四倍と想像を絶する殺人的なインフレです。
さらに軍事政権は、チリ人民が獲得した社会、経済上の成果も掘りくずそうとしています。
チリ産業開発公社の発表によると、軍事政権は、人民連合政府のもとで国有化され人民の手に握られていた大企業をすでに百二十社も旧所有社に返還し、さらに他の四十社も近いうちに返還するものとみられます。
アナコンダ、ケネコットなど米系三大銅会社は、民族の重要資源の確保を求める国民の強い声におされて、さすがに国有化を〝解除〟できずにいますが、米独占を相手の〝補償交渉〟はすでにはじまっています。
また大土地所有者の土地を収用してつくられた農業生産協同組合は解体され、土地は「個々の農民に返還」されました。このため、中南米特有の大土地所有制が大手をふってまかり通るのは時間の問題とされています。
このようにチリ全土は重大な経済危機におちいり、国民の間にさまざまな形で不満があらわれていますが、さいきん軍事政権の指導者や御用新聞などは、しきりに隣国ペルーからの〝侵略〟の危険をさけび、反ペルー・キャンペーンをあおっています。「外部からの攻撃という事態」がおきた場合、住民を組織する〝愛国運盟〟の結成さえよびかけています。
これは、軍事政権が外部からの侵略の危険を口実にして、国内の矛盾から国民の目をそらすと同時に、〝戦時経済〟を正当化し、「国内の転覆活動や外部の敵とたたかう」ため、新たな厳しい措置をとろうとしていることを意味するもので、これにたいするチリ人民の抵抗が、いっそう強化されることは必至といわなければなりません。
(『チリ人民連帯ニュース』第2号 1974年5月10日)
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