
(『チリ人民連帯ニュース』第26号 1884年12月25日)
*パブロ・サラスが撮影したこのドキュメンタリーは「蘇るチリ」のタイトルでチリ人民連帯日本委員会が中心となって上映運動をしました。(『チリ人民連帯ニュース』第27、28号)
映像は、一九八二年十二月、サンティアゴ・デ・チレの中心街で警官隊に何百というデモ隊が立ち向かっている所から始まります。
ナレーターは「デモは一九八三年をつうじてますます大規模に挑戦的になっていく。八三年初頭、社会的政治的な緊張はチリ歴史上最悪の経済危機と結合している」と説明します。
国際婦人デーで何十人という婦人が逮捕され、大学ではストライキが勃発し、飢餓を訴える行進が残虐に弾圧されます。人民の怒りは高まっていき、五月十一日にチリ銅山労組によって呼びかけられた国民抗議デーで頂点に達します。抗議行動は予想をはるかに上回る規模でおこなわれ、政府は不意を打たれます。血の弾圧のなかで全国労働者闘争本部(CNT)が結成され、第二回の抗議デーを呼びかけます。知識人、アーティストも行動に立ち上ります。
サンティアゴ・ピオノーノ街の大学では学生が総会を開き、抗議デーに合流します。学生たちは「カラビネーロ(警官)、君たちの親父さんも労働者じゃないか」と呼びかけます。警官はキャンパスをとり囲みますが、学生たちをおじけづかせることはできません。ここで予期しないことが起こります。断乎とした学生たちの前に、警官が動揺して一種の対話が始まったのです。学生は叫びます。「僕らは静かにしている。武器を持たない者をどうして殴るのか。僕らは暴力を求めない。総てのチリ人にとって不正な状況に抗議しているんだ。」
通りには「パン、仕事、自由、正義!」を要求する声が鳴りひびき、警察の銃、催涙ガス或いはヘリコプターなどに投石で抵抗する闘いが続きます。
住民たちも台所の様々な道具をうちならし、子供たちを学校にやらず、買物もしないで抗議に合流します。
かつてアジェンデ政権に対抗し、クーデターへの道を準備したトラック業者も今や抗議行動に加わり、インタビューに答えてその不満の理由を述べます。「二年前、トラックを買った時は四万五千ドルしました。毎月払いつづけてきましたが、現在ローンは五万ドルにのぼっています。こんなことって世界中どこにもありゃしませんよ。」
長年にわたる圧力による苦しみ、絶望が爆発します。人々は恐怖をのりこえて、街頭で自らの力を発見します。大衆の気分は盛り上り、闘う気運が広がり、高まり、永続化して抗議行動につながっていきます。軍政によって禁止されていた政党も抗議行動に参加します。キリスト教民主党を中心に「民主同盟」が
社、共などを中心に「人民民主運動」が結成されます。反乱が広範な諸階層に広がり、軍政にとって蜂の巣をつついたような状況になるに従い、弾圧も凶暴さをまします。
非道な拷問を加えられた女性教師は云います。「私にしたように、そうしたやり方で他の人間を扱うことができるなんて、それがチリ人だなんてとても信じられないことです。彼らは人を心理的に破壊しようとします。でもその時人には新しい力がわいてくるんです。自分自身の価値感、原則に対する確信、力が生まれてくるのです。自分のなかで闘いが始まります。自分は負けまい。前より強くなって出ていくんだ。そうした闘いが自分の内部で始まるのです。」
八月の抗議行動にはクーデターさながら軍隊が出動して首都を制圧します。権力の暴力はポブラシオン(貧困者居住地区)
に集中して行使されます。そこにはもっとも断乎としてピノチェトに反対する人々が住んでいるからです。警察の襲撃で滅茶滅茶に家を壊された住民は云います。「奴らは最低の野郎だよ。殺人者だよ。何と奴らを形容していいか分らんよ。言葉じゃいいつくせないよ」「私たちは闘います。そして団結します。この馬鹿どもが私たちを殺そうとも、闘うでしょう。じっとしていません。皆同じです。」
九月の抗議行動では、クーデター後初めて何千人というチリ人が、バルパライソの墓地に葬られているアジェンデの墓に集まり彼をたたえました。「アジェンデの時代」をほんやりとしか知らない若い世代の人々が力強くデモを開始します。
「八三年末、チリ人権委員会は次のような結果を発表した。殺されたもの七三人、負傷したもの一、五三三人、逮捕されたもの一四、五〇〇人、拷問の告発は四三七件。
一九八三年九月十一日、銃剣でうち立てられた十年間にわたる独裁。様々に音もなくたゆみなく進められてきた十年の闘い。一つひとつの歩みが、勝利が数えきれない抵抗の行動に支えられている。
チリよ、汝の名を呼んだが、無駄ではなかった!
街頭で統一が鍛え上げられる。アジェンデが残した、あの〝広い大通り〟という予言のように」とナレーターが述べ、I・パラがうたう歌で映画はしめくくられます。
「子供は遊ぶことにあきたりはしない 人々は創造に倦んだりはしない コンドルは飛ぶことに疲れはしない 人々は闘うことに疲れはしない 何日が過ぎようと 何年が過ぎようとも 燃え上った炎は消えることはない」(O)
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