カデンツァ
──三木清氏に──
高橋玄一郎
事實をかき消して、自らをぬぐひ去る悲劇の門へ
古い都のなまりから中世の異教濟度の鐘が鳴りひびく
獄壁はスクリインとなり映らない言葉の影を吸ひこむ
人生の遍路を訂す語ると問ふの構造は終局を告げる
溶けてゆく鐵鎖のとぐろ、朽ちない虚空に向ひ自らの顔容の盈虚を量る
大氣はすでに酸素を放射しつくし新しい化粧をほどこしてゆく
凝集するパスカルの細胞はみるみる囚房を蔽った
アルデバランが夜空を過ぎるときつぎつぎに教行信證を引き裂いてゆく
嘆異鈔の螢光板にありありと匂ふ肉體の曼荼羅華
原子核壊變の理論が空中を飛んだあとから敗戦が海岸線を染めぬいた。
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