花
松本隆晴
今までに見たこともない
何か途方もなく大きな花が
誰も知らない
どこか遠い空の中で
静かに 静かに開いていくような
そんな幽かな夜明けがある
夢より淡い目覚めがある
大きな 大きな 真白い花が
たった一輪
思い出よりも遙かなところで
ひっそりと揺れているような
そんな美しい夕暮れがある
花びらにも似た たそがれがある
やさしい 透明な花びら
少年の日の虹のように
いつも心の青空に
そっと香っていたその花から
ふいに一つの花びらが
音もなく
こぼれて 散って 消えてゆく
そんな思いが
果てもなく広がる
暗く 深い 夜の時間がある
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