私のピカソ(13)
戦争と平和──反戦・平和のたたかい励ます
ピカソの壁画「戦争と平和」については、以前に「赤旗」(日刊)紙上で紹介したことがあるが、ここでもう一度とりあげておきたい。いまはまた戦争と平和の問題がきびしく問われている時だから。
一九五〇年六月に始まった朝鮮戦争には、アメリカ軍が介入し、はては細菌作戦まで行なった。ピカソはそれに抗議して「朝鮮の虐殺」を描き、ついで細菌作戦をも告発した「戦争と平和」を描く。
この壁画は二枚の画から成り、それぞれ五☓十メートル、合わせて百平方メートルという広大さである。
「戦争」(写真上)の画面では、角を生やした奇怪な人物が、やせ馬の曳(ひ)く柩車(きゅうしゃ)に乗って、血まみれの剣をふりかざしている。左手の皿からは細菌がばらまかれている。背景の空には一群の兵士の影絵がくっきりと浮び上がっている。この不吉な一団に向かって、平和の戦士が正義の剣と鳩の紋章のついた盾を手にして、地獄の敷居にすっくと立って、戦争をおし止めている。
「平和」(写真下)の画面では、子供たちが跳ねまわり、ケンタウロス(半人半馬)が笛を吹いている。オレンジの木かげでは三人の人物が仕事にはげみ、母親は赤ん坊に乳をのませている。ここでは平和のもとで働き生きる悦びが謳歌されている。
こんにち、細菌戦争どころか核戦争の危険が現実のものとなっているとき、ピカソはこの絵画をとおして、戦争に反対して闘う全世界の人民を支持し励ましているのである。
この壁画は、ヴァローリスにある十四世紀の古い礼拝堂を改造した美術館の壁を飾っており、そこはいま「平和の殿堂」と呼ばれている。
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