ゲルニカ ──ファシズム告発の叫び 大島博光
一九三六年七月以来、スペイン市民戦争が始まっていた。一九三七年一月、ピカソはパリ万国博覧会スペイン館の壁画を制作するよう依頼をうけたが、なかなか手がつかなかった。四月、バスクの小さな町ゲルニカがフランコ支援のナチス・ドイツ空軍によって爆撃され、市民と町は壊滅した。このファシストの暴虐は全世界に大きな衝撃を与えた。むろんスペイン人民を支持していたピカソの怒りも大きかった。その怒りから壁画のイメージも結晶してゆく。スペインの詩人、アルベルティは書く。
きみは 怒りに燃えて告発し
天にまで挙げた きみの慟哭を
断末魔の馬のいななきを
そして腕を切り落とされた母親から
怒りの歯を きみは抜きとった
きみは地面に並べて見せた
倒れた戦士の 折れた剣を
えみ割れた 骨の髄を
皮膚の上にぴんと張った神経を
苦悶を 断末魔の苦しみを
そして きみじしんの驚愕を……
「ゲルニカ」は絵画があげた叫びそのものである。永年、ピカソが蓄積してきた、キュビスムをふくむ色いろの絵画手法、絵画言語──それらによる分析と再構成によって初めて、この叫びは画面に定着し、永遠にファシストの暴虐を告発しつづけるのである。
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