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女の胸像   私のピカソ(5)

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(「しんぶん赤旗」 1984年4月8日)



 女の胸像  ──新しい創造の前ぶれ             大島博光

 一九〇七年はピカソの絵画にとってきわめて重要な年である。それは現代絵画史において新紀元を画した「アヴィニョンの娘たち」が描かれた年であり、ピカソがそれ以前のおのれの作品と決別し、新しい創造を始めた年である。また一九〇七年十月にはセザンヌの回顧展がひらかれて若い画家たちに大きな影響を与えた。
 この「女の胸像」は「アヴィニョンの娘たち」の前に描かれていて、その習作とも見なすことができる。この仮面のような顔は「アヴィニョンの娘たち」の顔の前ぶれでもある。力強い線による顔形(マスク)、黒い線でとり巻かれた大きな眼、三角形の鼻の下部と口との簡潔な表現……鼻の影は頬のうえの厚塗りの線影によって描かれているが、これはイべリヤ彫刻および
アフリカの仮面彫刻からの影響によるといわれている。
 その頃、ピカソは米国の女流作家ガートルード・スタインの家でマチスと知りあい、二人は死ぬまでライバルとしての友情を保つ。マチスは「生きる悦び」におけるように、幸福な世界を優雅に眺め、愛撫し、回想する。しかしピカソは猛り狂った牡牛のように対象に襲いかかる。対象をひき裂き、破壊し、解剖し、それらの破片をおのれのファンタジーのままに再構築する。そしてその分解、分析の結果を生(なま)のままわたしたちに突きつける。ピカソの興味をひくのは現実そのものである。そこにある現実──重みがあって、手でさわることのできる現実、眼で見ることのできる現実である。
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