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花岡脩(武井脩) 「あらかん神話」 

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あらかん

<『蠟人形』第15巻第2号(二・三月合併号)1944年2月>
*この号をもって『蠟人形』は戦時のため休刊し、ビルマから送られた花岡脩の詩も終わりとなります。
*アラカンとはビルマの地名で、かつて日本兵はインドとの国境をなすアラカン山脈を見ながら従軍しました。
 
蓮



 あらかん神話
              ─序章─
                           花岡脩

胸病めるごと美しき 生誕の日に、
脅かしつゝ夢に來る影もなく、
汝が沈みゆく肉體の、
微熱ある緑に映えて、
かの閉ざせるくらき眼《まなこ》をさへもひらきぬ。
その眼《まなこ》夜となく朝となく盲ひてありければ、
神らはじめて輝ける夢見せんものと、
その青ずめる雨の掌もて、
汝が目覺めし軒の奥ふかく、
産れし胎兒運びきたりぬ。
あゝ夕魄のなか髪もなき、かの女《をみな》の兒の泣けば、
屋根は眩暈して黄金に染まり、
樹々の緑みな雨に溶け入りて、顫へつつ、
くれなゐや、ひそめる母のふるさとの、
空虚《ノクイエ》の果てをもとめ呼ばひぬ。

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