ヒロシマ

ヒロシマ

おお　ヒロシマの死者たち　原爆とも知らずに
世界最初の　ピカドンに　灼き殺された人たち

ヒロシマ　子供たちは　生きながらに灼かれた
ヒロシマ　女たちは　生きながら襤褸となった

ヒロシマ　若者は生きながら蛆虫に喰われた
ヒロシマ　男たちは生きながら　影になった

ヒロシマ　母親は　子をかばった姿のままで死んだ
ヒロシマ　子は母親にすがったままに死んだ

ヒロシマ　太田川は死者たちの三途の川となった
ヒロシマ　ケロイドになった馬の上にも黒い雨が降った

ヒロシマ　人間が虫けらのように殺された
だが　だれひとりとして　むだには死ななかった

ヒロシマにこの大量虐殺を投下したものは
そのとき　みずから人間であることをやめた

ヒロシマ　死者たちは眠ることができない
灼かれた眼の痛みで　眠ろうにも眠れはしない

ヒロシマに　わたしは地上にあった地獄を見た
ダンテも　こんな地獄をくぐりはしなかった

ヒロシマに　わたしは原子の火　地獄の火を見た
プロメテも　こんな怖ろしい火は盗まなかった

ヒロシマの　地獄に　人間の灰や影を見て
わたしたちは　生きることの尊さを学んだ

ヒロシマの空に　むくむくとのぼったキノコ雲は
あかねの雲ではなくて　残虐兵器であった

ヒロシマは　世界のうけた黒いケロイドとして
永遠に　残虐兵器の犯罪を告発するだろう

この地球をまるごとヒロシマにしないために
ヒロシマをよく見て　忘れないようにしよう

ヒロシマに　たくさんの鳩が　飛んできては
ヒロシマから　世界じゅうに　飛び立ってゆく

関連記事

• わたしはいま　これをヒロシマで書いている 2021/08/10
• わたしの平和の歌 2021/08/09
• ヒロシマ 2021/08/08
• 日光浴 2019/03/01
• 立岡宏夫「きょう　まだわたしはいる」 2019/01/09