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フランスの起床ラッパヘの序曲

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フランスの起床ラッパヘの序曲
                             ルイ・アラゴン

人間よ 人間はどこにいるのか 人間は
掠(かす)めとられ車責めにされ 穴だらけ傷だらけ
家畜のように 烙印を押され
家畜のように 屠殺場におくられ
祖国はふみにじられ 見さげられ

愛よ 愛はどこにあるのか 愛は
ちりぢりにひき裂かれ 断ち切られた愛よ
愛は 力のかぎり たたかった
あの 腐った手を 払いのけようと
愛は 刃むかえるかぎり たたかった

見よ 肉食鳥どもが襲いかかり
巨大な餌食に むらがるのを
裏切者らが その前に土下座をする
坐れ おまえらにも席をやろう
血も乾かぬ やつらの足もとに

殉難者たちは 火に焼かれた薔薇だ
怒りと悲しみが 収容所にみなぎる
極悪人どもが 善人を狩りたてる
いつまで フランス人よ いつまで
ただ黙って許しておくのか いつまで

見よ 東部戦線の勝利を
光の白い罠に 暗黒は捉えられる
おお 自由の朝が訪れあける
赤いあかつきは ふるえおののかせる
茫然としたひとときの勝利者を

夜はすべて やつらの滅びとなれ
窓はすべて 銃眼となれ
すべての生ける手は螺針(ボールト)となれ
そしてやつらをちぢみ上らせ八つ裂きにせよ
大地よ やつらの足もとに燃えあがれ

やつらは われらの寝間(ねま)に眠る
われらの静かな地平線をまえに
やつらは夢みる われらの家で
いまこそ 追い払わねばならぬ
野獣どもを 犬を 裏切者どもを

もう 黙っているときではない
天が移り 変ろうとしているとき
もう 危険などと言ってはおれぬ
見よ見よ われらの大地のうえを
外敵の踏み鳴らす その重い足どりを

きけ フランスの義勇兵たち
閉じこめられた息子たちの呼び声を
組め 君たちの隊伍を
敷け 解放の方陣を
おお われらの眼に見えぬ軍隊よ

君たちの怒りは ふたたび燃え立ち
風をはらんだ帆のように
その箕(み)で世界を吹き分け すすむ
以前にもまして清らかな
団結した人民の偉大なカよ
武器のあるところより 武器を
執れ 執れ 敵に向けて
もう凪ぎを待つのは飽き飽きした
涙のパンを食べるのはたくさんだ
毎日がヴァルミーの戦いなのだ

  *(訳注)フランス大革命のさなか、祖国防衛に立ち上った人民の義勇軍は、一七九二年九月二〇日、ヴェルダンの西方ヴァルミーにおいてプロシヤ軍を撃退し、祖国を救い、革命をまもる。

(新日本文庫「フランスの起床ラッパ」)
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