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マルクス『フランスにおける内乱』  解説(四) 2.二つの草稿からの抜粋

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(カール・マルクス『フランスにおける内乱』解説 村田陽一 大月書店 1970年)
 
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 『フランスにおける内乱』の二つの草稿からの抜粋部分は、高い理論的価値をもつものであって、パリ・コミューンの社会的・経済的方策、国家的中央集権化の問題、搾取者の国家機構の粉砕の問題、農民や都市小ブルジョアジーにたいする政策の問題などについて、完成稿にくらべていっそう詳細な展開をふくんでおり、『内乱』の該当箇所の理解をおおいに助けるばかりか、『内乱』でははぶかれた、多くの重要な命題をふくんでいる。そうした命題のいくつかを参考のために列挙しておこう。
 コミューンは国家そのものにたいする革命、国家権力の決定的な否定であるという命題(一四二─一四三ページ)。コミューンは階級闘争を廃止するものではないが、階級闘争が最も合理的、人道的な仕方でその諸局面を経過するための合理的環境をつくりだすという命題(一四八ページ)、労働者階級は階級闘争を手段として、すべての階級と、したがってまたすべての階級支配とを廃止することにつとめるという命題(同)、労働の奴隷制の経済的諸条件を自由な労働の諸条件とおきかえることは、時間を要する漸進的な仕事であって、そのためには分配の変更だけでなく、生産の新しい組織が必要だという命題(一四九ページ)、コミューンは、農民の名目的所有を農民の労働の果実の真の所有に転化することができ、真の独立生産者としての農民の地位を破壊することなしに、近代農学の恩恵に農民をあずからせることのできる唯一の政府形態だという命題(一五四ページ)、労働者階級だけが科学を階級支配の道具から人民の力に転化し、科学者そのものを階級的偏見の仲介人から自由な思想の代表者に転化することができ、科学は労働の共和国においてのみその真の役割を演じることができるという命題(一五六ページ)、勝利したプロレタリアートは、旧来の国家機関のうち、その実務的な機関を改造する一方、階級支配の用具たる機関を破壊しなければならないという命題(一五八ページ)、コミューンはパリその他の大都市で古い政府機構を破壊したあとで、それを真の自治とおきかえるという命題(一六三ページ)、等々。以上にあげただけでも、この草稿がいかに豊かな理論的思考と研究の材料をふくんでいるかがわかるであろう。

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