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マルクス『フランスにおける内乱』  解説(三)四つの章 (2)労働者階級の権力

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(カール・マルクス『フランスにおける内乱』解説 村田陽一 大月書店 1970年)

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 マルクスがパリ・コミューンの最も重要な教訓と見なしたのは、「労働者階級はできあいの国家機構をそのまま掌握して、自分自身の目的のために行使することはできない」(七六ページ)ということであった。まえに名まえをあげておいた一八五一年の著作『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』のなかで、マルクスは、一八四八年革命の経験の分析にもとづいて、プロレタリア革命の第一の任務は古い国家機構を打ち砕くことにあるという認識に到達していたが、いまパリ・コミューンの実践は、この予見を確証し、また古い搾取国家をなにによっておきかえるかという問題に解答をあたえることを可能にしたのである。
 マルクスは、コミューンの政治的・社会的諸方策をくわしく研究して、そこに新しい型の国家、未来の国家、プロレタリア独裁の国家の特徴を認めている。常備軍と独立の警察を廃止して、全員武装した人民の直接の権力行使とおきかえたこと、すべての人民代表と公務員を、選挙され、報告義務を負い、随時に解任できるものとし、その俸給を労働者なみに引き下げ、こうして官僚主義の根を絶ったこと、三年ないし六年に一度支配階級のどの成員が議会で人民を代表し、かつ踏みにじるかをきめていた旧来の議会制度ではなくて、議会を真の人民代表に変えたこと、議会を立法権と執行権を結合した行動的機関としたこと、教会を国家から分離し、教育を国家と教会の干渉から解放したこと、これらが、マルクスの指摘している新しいプロレタリア国家、コミューンの決定的な特徴であった。このようなものとしてのコミューンは、「本質的に労働者階級の政府であり、横領者階級にたいする生産者階級の闘争の所産であり、労働の経済的解放をなしとげるための、ついに発見された政治形態である」(八五ページ)。これが、マルクスがその分析から引きだした総括的な結論であった。この著作ではマルクスはプロレタリア独裁ということばをつかってはいないが、エンゲルスがその序文で言っているように(二六ページ)、これはまさしくプロレタリア独裁の形態であった。今日では、プロレタリア独裁の歴史的形態として、ロシアのソヴェト、第二次世界大戦後の人民民主主義権力などが存在しているが、それらはみな、歴史的条件によって規定されたさまざまな修正をともないながらも、コミューンの根本的特徴をうけついだ同じ型の国家であると言うことができる。
 パリ市民の普通選挙から生まれたコミューンが、どうして労働者階級の権力としての性格をもつにいたったかの理由は、積極的な反動派や大ブルジョアや腐敗分子がヴェルサイユに逐電していたこと、コミューン革命の推進力であった国民軍の主力が労働者諸中隊であったこと、ブルジョアジーの裏切りに衝撃をうけた勤労都市小ブルジョアジーが労働者階級の周囲に結集したこと、等々によって説明される。エンゲルスが述べているように、コミューンに席を占めたのは、ほとんど労働者か、定評ある労働者の指導者であった(一八ページ)。内乱の終結後、ヴェルサイユの軍事法廷で有罪判決をうけた一万余のコミューン戦士(欠席裁判によるものを除く)の九割が労働者であり、残りの大部分も事務員、商業従業員、小学校教員であった事実は、コミューン革命と、ヴェルサイユ派にたいする内戦の担い手が労働者であったことを如実に語るものである。

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