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マルクス『フランスにおける内乱』  解説(二)普仏戦争にかんする二つの呼びかけ(下)

ここでは、「マルクス『フランスにおける内乱』  解説(二)普仏戦争にかんする二つの呼びかけ(下)」 に関する記事を紹介しています。

 
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(カール・マルクス『フランスにおける内乱』解説 村田陽一 大月書店 1970年)

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 第二の呼びかけは、フランス帝政軍が壊滅し、パリに共和制が宣言され、ドイツ側の戦争目的が達成されたのちも、ドイツ軍が進撃をやめず、領土併合の野望をあらわにした時点で書かれた。戦争は第二の局面にはいり、ドイツ側についてみて征服戦争、フランス側についてみて防衛戦争と変わったのである。呼びかけのなかでマルクスは、この新しい局面におけるドイツ(および他の国々)の労働者階級の国際的任務を示している。すなわち、アルザス=ロレーヌの併合に反対し、フランスにとっての名誉ある講和、フランス共和国の承認を要求してたたかうこと、これである。ドイツの労働者階級にたいしては、マルクスは、ドイツの支配階級がフランスのボナパルティズムにたいする戦勝をドイツ人民の敗北に変えようと企図するであろうことを警告している。他方、フランスの労働者階級にたいしては、マルクスは、労働者が市民としての義務―─祖国の防衛──を果たすことは必要だが、臨時政府――その信頼すべからざることを、マルクスははっきり指摘している――にたいして早まった蜂起をおこして、フランスのブルジョアジーとプロイセンの軍隊とを同時に敵としてたたかう愚をおかしてはならない、と警告している。階級対立が発展した一八七〇年のフランスにおいては、一七九二年のフランスの革命戦争当時のような国民的一致はありえないこと、反動化したブルジョアジーが、革命運動の弾圧のためには、外敵と通謀して祖国を売るのをはばからないことを、マルクスはよく知っていたのである。マルクスはフランスの労働者に、むしろ彼ら自身の階級を組織するために、共和制があたえる便宜を利用せよ、と勧告している。
 第二の呼びかけのなかにドイツ軍国主義の政策の不可避の結果として予測されている人種戦争が、第一次世界大戦というかたちで実現したことは、あらためて言うまでもないであろう。ドイツの民族的統一の事業がプロイセンのユンカーや反動的軍閥の手にゆだねられたことは、同国の民主化をはばみ、対外的にはドイツ軍国主義の膨張政策を促進する結果となり、ドイツ人民ばかりか、全人類にとっての不幸の禍根を蒔いたのである。フランス=プロイセン戦争についての二つの呼びかけは、情勢の正確な把握、見とおしの先見性の点でマルクス主義の理論的方法の優越性の輝かしい証明であり、またその戦術的な結論においては、原則性と、問題にたいする具体的なアプローチとを結合した模範である。ことに戦争と平和の問題を考察するさいには、その戦争の社会的=経済的原因、そこに反映している諸階級の利害、複雑にからみあい、変化してゆくさまざまな契機を具体的に、かつ動的に分析する必要があることを、それは教えている。


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