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そのわけを話そう──『愛と革命の詩人ネルーダ』──戦争とファシズムに抗して

ここでは、「そのわけを話そう──『愛と革命の詩人ネルーダ』──戦争とファシズムに抗して」 に関する記事を紹介しています。


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(大月書店『愛と革命の詩人ネルーダ』──戦争とファシズムに抗して)

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ピカソ「フランコの夢と嘘 Ⅱ」より




 荒れくるうファシズムの嵐をまのあたりに見て、ネルーダは『そのわけを話そう』という詩のなかに、最初のヒューマニスムの叫びをあげる。

  そのわけを話そう

きみたちはたずねるだろう──リラの花はどこにある?
ひなげしに蔽われた形而上学は どこにある?
そして 隙間と小鳥たちの声にみちみちた
言葉の雨は どこにある?

わたしに何が起きたか それを話そう

わたしは マドリードの街に住んでいた
鐘楼があり 時計塔があり
たくさんの木があった

はるか遠くに 
カスチリヤの乾いた顔が見えた
広漠とした 草の海のように!

わたしの家は
花の家と呼ばれ あたり一面に
ジェラニュームの花が咲きこぼれ
それは うつくしい家だった
たくさんの犬や子供たちがいて

ラウールよ 思い出さないか?
思い出さないか ラファエロよ?
フェデリコよ 土の下で
思い出さないか? わたしの家のバルコンを──
あのバルコンで 六月の光が
きみの口の中の花花を絞め殺したのだ

兄弟よ 兄弟よ
あたりには
活気にみちた声が溢れていた
市場の広場には 塩が積まれ
焼きたてのパンの山があり
わがアルグエレスの市場には
蒼白いインキ壺のような銅像があり
油は スプーンのなかを流れ
街通りには 賑やかな足音や
手を鳴らす音が 溢れていた
生活のきびしい物差しであるメートルやリットルがあり
屋台には 魚がならび
冷めたい陽《ひ》の射す屋根やねの波のうえに
疲れた尖塔が そそり立ち
白く 燃えるように繊細に咲いた じゃがいも畑があり
トマト畑の波が 海までうねっていた

ある朝 そのすべてに火がついた
ある朝 まっ赤な火が
大地から吹き出して
すべてのものを なめつくした
そのときから 戦火が燃えあがり
そのときから 硝煙がたちこめ
そのときから 血が流れた

悪党どもは 飛行機にのり モール人をひき連れ
悪党どもは 指環をはめ 公爵夫人を連れ
悪党どもは 祝福をたれる黒衣の坊主どもを従え
悪党どもは 空の高みからやってきて 子供たちを殺した
街じゅうに 子供たちの血が
子供の血として 素朴に流れた

山犬にさえ侮蔑される この山犬ども!
のどの渇いたあざみ《﹅﹅﹅》さえが噛みついても つばを吐きかけるこの石とも!
蝮《まむし》にさえ嫌われる この蝮ども!

わたしは見た おまえらの前に
スペインの血が 湧き立ち 逆まき
誇りと匕首の波のなかに
おまえらを呑みこみ 溺らせるのを!
将軍どもよ
裏切者らよ
よく見るがいい 崩れさったわたしの家を

しかし 崩れさった家のひとつひとつから
花花のかわりに 熱く焼けた金属が咲き出るのだ
しかし スペインの傷ぐちのひとつひとつから
スペインが 立ち上がるのだ
しかし 死んだ子供のひとりひとりから
眼のある鉄砲が現われるのだ
しかし おまえらの犯罪のひとつひとつから
鉄砲の弾丸《たま》が生まれでて
それはいつか おまえらの心臓のありかを狙うのだ

きみたちは尋ねる──なぜ わたしの詩が
夢や木の葉をうたわないのか
故国の大きな火山をうたわないのか と
来て見てくれ 街街に流れてる血を
来て見てくれ
街街に流れてる血を
来て見てくれ 街街に流れてる
この血を!
                     (『心のなかのスペイン)
 ネルーダはここで、スペインのために叫びをあげるための詩がうわっつらの、品のいい悲歌となることを避けている。生けるスペインを喚びおこすために、かれは日常のスペイン──家や街や時計塔や市場を描き、油や塩や魚などの日常的な物を、抑制のきいた詩句のなかにはめ込んでいる。このとき以来、ネルーダの伝記は、スペインの空の下でくりひろげられる人民の闘争の歴史とかさなりあうことになる。

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