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人民の牡牛はもどってくる

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<『マチャード/アルベルティ詩集』1997.12>

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人民の牡牛はもどってくる
                       ラファエル・アルベルティ

みんな思い込んでいた あの牡牛は
もう角をへし折られ 頸を傷めつけられ
唸りをあげても その唸り声さえ
風のなかに もう聞こえはしないと
みんな思い込んでいた あの牡牛の
陰にこもった呻きは 断末魔の苦しみだ
止めの一撃に抵抗したむかしの力ももう萎えはてて
ぐったりと身を曲げて あの猛猛しさは見る影もない
だが突然ある日……

何が起きたのだ? 何が?
いったい どうしたというのだ
今朝 逞しい攻撃力がみなぎり溢れ
あの荒荒しい血が眼ざめるとは?
人民の牡牛は立ち上がり
スペインの牡牛は踊り出る
飢えた牡牛は街なかにふくれあがり
猛り狂って 棒立ちとなり 跳ねまわる
まるでうつくしい嵐だ
炎と稲妻の竜巻だ
牡牛は生きていて もどってくる
そうだ 牡牛を閉じこめるような
どんな囲いも柵もありはしない
どんな足枷も牡牛を抑えつけることはできない
そこにいるのは野のごっつい牡牛だ
工場の 金属の牡牛だ
炭坑の 石炭の牡牛だ
山の 雪の牡牛だ
海の 無分別な牡牛だ
海べの 白と青の牡牛だ
これがスペインの牡牛だ
全スペインがその闘牛場だ
もしも怒り狂った牡牛が
消すことのできぬ火花を
まき散らす火打ち石となるなら
その火に 燃えたたぬ何があろう
その火に刃向かうどんな霧があろう
きのう 牡牛はバルセロナで跳ねまわり
きのう マドリードで跳ねまわったら
明日はセヴィラで跳ねまわり
明日はまた アストゥリアスで跳ねまわるだろう
牡牛が突きすすむ路上では
死者たちさえ立ち上がるだろう
牡牛が通ると 火が燃えたち
そのひと突きは弾丸となるだろう
牡牛とたたかう
くら闇のやからはいないだろう
闘牛士の槍もマントも
牡牛を倒す投槍もないだろう
牡牛を地にまみらせる剣のひと突きもなければ
牡牛を引きずってゆく騾馬もいないだろう
そうだ 何んにもないだろう
天をも衝く 意気さかんな牡牛のほかは
スペインの山々を照らす新しい光のほかは

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