fc2ブログ

エリュアール「脅かされる勝利」

ここでは、「エリュアール「脅かされる勝利」」 に関する記事を紹介しています。


1


(『詩学』1952年2月、 『エリュアール詩選』1956年)

2



 脅かされる勝利      ポール・エリュアール
                        大島博光訳

用心しろ生活の鏡は曇ってきた

血の最初の一歩が踏み出され一滴の血が流れれば
また戦争の血の火の
廃墟の砂漠の最後の行進だ
理性なき人間の終りだ
理性的な人間の終りだ
死だ惨めさの終りだ
圧制の終りだ

しかしまた可能性の終りだ
      *
死に滅びてはならぬ生きねばならぬ
一組の恋人たちの歩いて行った足跡のうえに
草は芽を出し花々が名乗りをあげる
そうして人間たちの通るところどこでも
冬のなかに春の気はいが感じられる
錆はくさりのなかに融《と》け
群衆は幸福な群衆となり
子どもたちは地平そのものだ

平和は人間たちを若返えらせるだろう
      *
おれたちはもう用心するなどと夢にも思わぬだろう
春が行き夏が来る雨が降り太陽が照る
秋はさわやかに冬は荒々しい希望
そうして空間と時間の
すべての国境のうえで
人間たちは兄弟のように結ばれ
おんなじ日の出とおんなじ日の入りがある
春がきて夏になり秋になり冬が来る

終りない生活のこだまと照り返えし

関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/4537-9e82fac6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック