原子へのオード(パブロ・ネルーダ『基本的なもののオード集』)

ここでは、「原子へのオード(パブロ・ネルーダ『基本的なもののオード集』)」 に関する記事を紹介しています。
 『基本的なもののオード集』(一九五四年)は、題名の示すように、この世界を構成する基本的なもの─パン、野菜、鳥、猫、大地、海、愛など人間が日日に出会うものを平明に歌っている。それら、自然、現実、物との情熱的な対話のなかでも、生命の力は躍動し、詩人は愛をうたい、平和をうたい、不義不正や死とたたかっている。「原子へのオード」は、「鉱石のなかに埋もれているかに見えた」原子が「戦争屋」によって核兵器に変えられ、ヒロシマに落とされた歴史を衝撃的に描き、核が平和に役立つようにと訴えている。

 原子へのオード

 小さな小さな星よ
 おまえは鉱石のなかに
 永遠に埋もれているかに見えた
 隠されたおまえの悪魔の火といっしょに
 ある日 その小さな扉を叩くものがいた
 人間だった
 一撃で おまえは解き放たれた
 おまえは世界を見た
 おまえは町町を走りまわった
 おまえの大きな光が生活を照らすようになった
 ・・・・
 そのとき戦争屋がやってきて
 おまえを誘惑して言った
 原子よ 小さく まるまれ
 わしの爪の下に横たわって
 この箱のなかに入れ
 それから戦争屋は
 おまえをチョッキのなかに入れた
 まるでアメリカの丸薬のように
 そして世界じゅうを旅行して
 おまえを落とさせたのだ
 ヒロシマに

 あけぼのは焼きつくされた
 小鳥たちはみな黒焦げになって落ちた
 ぞっとするような
 超人的な懲罰の形(かたち)が立ちのぼった
 血まみれのキノコ 大ドーム 煙り・・・・
 死が平行波となってひろがり
 子供といっしょに眠っていた母親や
 川の漁師や魚たちを襲い
 すべては灰となった
 おお 怖るべき気ちがい火花よ
 おまえの経椎子(きようかたびら)のなかへもどって行け
 おまえの鉱石のねぐらにひきこもれ
 ・・・・
 ふたたび盲目の石にもどれ
 ごろつきの言うことをきくな
 生活や農業に協力し
 モーターにとって代って
 エネルギーを育て
 星星を豊かにすることだ
 ・・・・
 (新日本新書「パブロ・ネルーダ」)
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/tb.php/452-e789c0b9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック