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アンドレ・ブルトン ポオル・エリュアル「人間」 5 死

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(『東京派』四月號 1931年)

2


  5 死

 山岳地方の山羊の毛織物がその緯《よこいと》の中に、昆虫達の坩堝を隠す。手より手へ、「フュレ」遊びは、蝎《サソリ》形で、惡の小鳥網の中を過ぎる。
 行き給へ。翻譯し得ない小さな花よ。ここから(彼女は隠れる。)おおそこで! 自動車運轉士、(彼は運轉台から降りて逃走する)待ち給へ。僕は一つの名を思ひ出す……僕があったこの、犬が僕に運んで來たダイヤモンドの円匙。
 そして僕は何も忘れない。そこに血液の瓶がある。それと、僕は決して希望しなかった幻影と同棲する為に約束する。
 僕は、更に、無茶苦茶に行く。人々が僕の口の中に投げ入れる空語は、彼等の効果を表し始める。獅子《リオン》の鬣《たてがみ》の中の手。僕は、最後に僕を裏切った虚偽の地平線を見る。
 旅行は常に僕を遠くに運んだ。やって來る確信は、開かない戶口で、呼鈴《ベル》を百回も鳴らすことに、僕を似らせなかった。
 苦悩も同じく出入していた。鎧扉の陰の女が僕のベッドの上を扇ぎにやって來た時、僕は知っていた。僕は寒くなければならないといふことを。僕は寒かった。併し、若い女は眠らなかった。僕が彼女の頭を胸の上で見守っていたといふことは、認められなければならない。そこで、この光線、それは消え得ない夜を支持し、僕がいない光線を探す、彼女の夜の姿だ。
 春の馬の中の夏の耳輪は約束である所のそれを、長い間僕に講義した。獣性の雨は、泡の中を、びっこをひいてゆく進歩をその触角の中へ運ぶ。彼女はいつも暗黙で脅迫的な幻想曲を歌ふ。彼女の聲の響は痛恨だ。
 ここに訥弁な大きい地點がある。羊達はやって來た。竹馬の上に。
(完)


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