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ランボオ「献身」

ここでは、「ランボオ「献身」」 に関する記事を紹介しています。


献身


(ランボオ「イリュミナシオン」 自筆原稿)

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 献 身
         アルチュール・ランボオ 大島博光訳

 おれの妹、ルイズ・バネン・ドゥ・ボランゲムへ。『北』の海へ向う彼女の青い角頭巾《かくずきん》。──難破したひとびとのために。

 おれの妹、レオニイ・オウボア・ダシュビイへ。おお! ──ぶんぶんうなり、むっと匂う夏の草。──発熱した母親や子供たちのために。

 ルルへ──悪魔のルルへ──学校通いの、幼友達の頃の、祈祷所への趣味がまだなくならぬ。──男たちのために。

 **夫人へ。

 若き日のおれへ。あの世を隠遁したり、伝道したりした、年とった聖者へ。

 貧しいひとびとのこころへ。或る徳の高い僧へ

 さてはまた、信仰記録にかきとめられてあるような、すべての信仰へ。おれたちの持ちまえの真剣な悪徳や、一瞬の渇望にしたがって、どうしても起らねばならぬ、.そんな事件にまみれた信仰へ。

 こよい、そそり立った氷のうえに、魚のようにあぶらぎり、十月《とつき》もの赤い夜のように赤く染まったシルセエトへ。──(琥珀いろに、燃えあがる《★》かの女の心。)──この極地の混沌よりもものすごい数々の武勇伝に先だち、夜の口のように声なくもだした、おれのただひとつの祈りのために。

 どんな犠牲をはらっても、どんな風になろうとも、形而上学的な旅にさまよいでても。──そんなときには、なおさらのこと。

★ 燃えあがる 原文はSpunsk. ランボオの造語らしい。ラテン語のSpongiaより変化したSpunkという英語がある。ここではこの意味に訳しておいた。(訳者註)

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