昆虫記

　昆虫記　　　　　　　　　　　　大島博光

あぶら虫めわ　どろぼおだ
砂糖をためた　米ためた
敗戦の日のどさくさや
やみ市場のどさくさで

食いものがなく飢えはてた
はたらき蜂が腕くんで
あぶら虫めの米倉え
米をよこせとおしかけた

けれど、腐ったこの社会
コン棒もった蟻どもが
あぶら虫めの米倉を
かたくまもって　入れさせぬ

コン棒もった蟻どもわ
あぶら虫めのお先棒、
虫めの甘い汁
なめにあつまる蟻どもわ

コン棒もった蟻どもわ
弱いものらをいじめつけ
あぶら虫えわ忠義だて
甘い汁えわ忠義だて

虫の社会のできごとを
知らせる役目の鸚鵡《おうむ》さえ
あぶら虫めや蟻どもに
買収されて知らん顔
　　　　　　　　　　　（一九四六）

（新日本文学会『新日本詩集』一九四八年）

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