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鈴木初江「ガリ版を切りながら」

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(『歌ごえ』2号 昭和23年4月)

浜辺








ガリ版を切りながら
                   鈴木初江

夜半十二時をすぎると
鉄筆もつ手がこごえてくる
両手をすり合し息を吹きかけ吹きかけ
ガリ版の音は冷たい。

今夜もまた風が出ている
樹立の揺れる音、北窓の揺れる音
春はまだ遠いのか
木枯しは私につれない。

本の読めない日
鏡を忘れる日
いつも毎日に追われ
働いても働いても支え切れない。
これでいいのかしら。
たまりかねて私は声を出す。



遠い灯を求めて歩いてきた半生の
疲労のにじみ出る生活の谷間に
今なおガリ版を切りながら
貧しい詩をかきながら
寒さ暑さにおびえながら。

もはや僅かな私の未来のためではない
子供たちが 今よりは
美しく豊かに生きるために
懸命に橋かける人々の見えない一人に。

その橋の鋼鉄の白く輝く日のために。

(『歌ごえ』2号 昭和23年4月)








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