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さて、ロンドンに亡命していたコミュナールたち──ヴェルレーヌのむかしの友人たちであったヴェルメルシュ、レガメエ、アンドリュなどのあいだでは、二人の醜聞について嘲笑や悪口が交されていた。ある日、ランボオがアンドリュを訪ねてゆくと、アンドリュは彼を戸口の外へつまみ出すという悶着がもち上がった。この話はすぐ亡命者仲間にひろがって、ヴェルレーヌとランボオは彼らから閉め出されることになる。
二人はたがいに、人生を台なしにしたという非難を投げつけあう。ヴェルレーヌには、気に障るようなことがあると、いつも暴飲する癖があった。そんなとき、二人の関係は、激しい、乱暴な暴力沙汰に及んだ。ドゥラエによれば、二人の口論はしばしば拳による殴りあいから、ドイツ学生の決闘のような、ナイフをもった立ち廻りにまで及んだという。ランボオはそれをつぎのように描いている。
やがて彼らは、このように傷つけあい血を流す暴力沙汰をかくすことができなくなる。一八七三年八月一日付の警察の調書によれば、「この両人は、仲直りの悦びを味わうために、猛獣のようにたたかい、ひっ掻き合った」とある。事態はこのままつづくべくもなかったのである。(つづく)
(新日本新書『ランボオ』)
さて、ロンドンに亡命していたコミュナールたち──ヴェルレーヌのむかしの友人たちであったヴェルメルシュ、レガメエ、アンドリュなどのあいだでは、二人の醜聞について嘲笑や悪口が交されていた。ある日、ランボオがアンドリュを訪ねてゆくと、アンドリュは彼を戸口の外へつまみ出すという悶着がもち上がった。この話はすぐ亡命者仲間にひろがって、ヴェルレーヌとランボオは彼らから閉め出されることになる。
二人はたがいに、人生を台なしにしたという非難を投げつけあう。ヴェルレーヌには、気に障るようなことがあると、いつも暴飲する癖があった。そんなとき、二人の関係は、激しい、乱暴な暴力沙汰に及んだ。ドゥラエによれば、二人の口論はしばしば拳による殴りあいから、ドイツ学生の決闘のような、ナイフをもった立ち廻りにまで及んだという。ランボオはそれをつぎのように描いている。
「幾夜も幾夜も、あの人の悪魔がわたしをひっとらえ、わたしたち二人は転げまわり、わたしはあの人と闘ったものです......」(「錯乱」Ⅰ)
やがて彼らは、このように傷つけあい血を流す暴力沙汰をかくすことができなくなる。一八七三年八月一日付の警察の調書によれば、「この両人は、仲直りの悦びを味わうために、猛獣のようにたたかい、ひっ掻き合った」とある。事態はこのままつづくべくもなかったのである。(つづく)
(新日本新書『ランボオ』)
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