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母たちの手 ~1955年9月4日」 大島博光記念館での上演に寄せて

ここでは、「母たちの手 ~1955年9月4日」 大島博光記念館での上演に寄せて」 に関する記事を紹介しています。
「母たちの手 ~1955年9月4日」

大島博光記念館での上演に寄せて
      二瓶龍彦

 いつでも遠く、にもかかわらずいつでも私たちの潜在的な問題を露見させる沖縄。
 舞台「母たちの手~1955年9月4日」は、戦後10年を経て起きた米兵による6歳の幼女に対するレイプ殺人「由美子ちゃん事件」をめぐるものです。
 昨年、沖縄に住むある編集者の方から、沖縄の人たちにとって今も口にすることができず、開いたままの乾かない傷として、この事件のことを教えていただいた。そして、舞台として形にできないかと宿題とともに。
 はたして、この究極の絶望を描き、しかも希望の糸を見出すことができるのか。この事件は、たまたま一度だけ起きたものではなく、以前にも起き、その後もつづく私たち人間が抱える乗り越えなければならない負の普遍性を示している。
 詩人大島博光も愛した南米チリには、「アンヘリート」という祭事がある。これは、幼くして逝ってしまった子どもを送る一晩中つづく葬儀。このなかに、絶望からのひとつの扉を見つけられるかもしれない。母たちの絶望にこたえる、失われたその子の声に耳を澄ますことから。
 沖縄と距離は隔たっているがとても似ているといわれるアイヌ。この舞台を制作していくなかで、アイヌの人たちに出会った。彼らの寛容の音楽に出会った。
 命は、慈しむためにある。ただただ、慈しむためだけに。どんな思想、大義も、命の尊厳に先立つものなど存在しない。
ひとつの失われる命をめぐり、様々な人々の教えのなかで学び、制作されたのがこの舞台です。
 大島博光記念館での舞台公演は2011年以来8年ぶりとなります。この新作を、愛と抵抗の詩人の魂が息づく場で上演できること、受け止めていただけたこと、ほんとうにうれしく思います。
(「大島博光記念館ニュース」51号)

二瓶

二瓶龍彦
83年 “total theatre 二瓶館” 設立。
91年 “カイロ国際実験演劇祭” 日本より初招待。
その後、チュニジア、エジプトのピラミッド前、フランス、ベルギー等をまわる。
01年 組織形態をとらない芸術運動体 “PHILLIA project” を展開。
14年 ワード・プレイ・カンパニー「バッタの学校」設立。
砂漠の音楽隊 Guelb er Richat ensemble、弦楽器担当。
15年より、芸術のサーカス小屋「caravan La Barraca を全国展開。
19年より、あらゆるジャンルの表現者による戦わない抵抗の手段として、「全国同時多発式バルラッカ大サーカス2020」を発進。


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