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ランボオ 「ロンドンへ」3.街に雨が降るように

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3.

 一八七二年十二月の終り、ランボオは母親の忠告にしたがってシャルルヴィルに帰る。この頃、『イリュミナシオン』のなかの数篇の詩が書かれる。
 そのときひとりロンドンに残ったヴェルレーヌは、相棒を失ってたちまち意気消沈、ノイローゼにおちいる。ハウランド街の小さな部屋は、ランボオがいたときには陽気だったのに、いまや冬のさなかで暗鬱であった。深い霧のたちこめる日がつづいたかと思うと、こんどはしとしとと雨が降りつづいた。ヴェルレーヌは孤独のなかで、あの有名な詩を書く。

  街に雨が降るように
  わが心にも 雨が降る
  わが心に 沁みとおる
  この憂鬱は 何んなのか

  おお 大地に屋根に降る
  やさしくあまい 雨の音!
  倦(うん)じ 悩む 心に沁みる
  おお 降るこの 雨の音!

  ここにはヴェルレーヌの孤独な旅愁と悲哀がにじみ出ている。そんな状態で新しい年を迎えると、彼は病気になった。たんなる風邪にすぎなかったが、ノイローゼのために彼は重病と思いこみ、いまにもひとりのまま死ぬのではないかと大げさに考える。彼は母親に手紙をかき、急いで病床に駆けつけてくれるように、またランボオに旅費を送って会いにくるよう連絡してほしいと懇願する。ヴェルレーヌの母親はさっそく姪をつれてロンドンに向かう。ランボオは二日おくれて彼女たちのあとを追う。
(つづく)

(新日本新書『ランボオ』)

雨

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